実はこれは何十年もの間で、幾度となく、私が見聞きしてきた情報だ。
東大は入試の段階では学部は決まっていない。科類別に入試をおこない、1~2年次は教養学部前期課程となり、3年次から文学部や法学部、経済学部、工学部、理学部、医学部など学部に分かれていく。
文科I類は法学部、文科II類は経済学部、文科III類は文学部や教育学部、理科I類は工学部や理学部、理科II類は農学部や薬学部へ、理科III類は医学部に、多くの学生が進学する。入試の段階で工学部につながる理科I類は募集人数が1108人と圧倒的に多い。理IIは532人、理IIIは97人、文Iは401人、文IIは353人、文IIIは469人となっている。
合格者の中での女子比率を見てみよう。理科I類は8.4%、理科II類は20.1%、理科III類は21.4%、文科I類は28.4%、文科II類は17.7%、文科III類は38.2%となっている(2024年度)。文系でも文科II類は17.7%と女子が少なく、理科II類や理科III類よりも少ない。実は理系だから女子が少ないというわけでもない。
理系女子の就職希望は「化粧品・食品・日用品のメーカー」
そして、注目したいのは理系でも、理科II類は20.1%と比較的女子の割合が高い点だ。農学部や薬学部への進学を希望する女子が多いのが分かる。そういった生物系の学部学科は、全国の大学で昔から比較的、女子の割合が多い。その理由は、女子は身近にあるものを扱うメーカーへの就職を希望する傾向があるからだ。
マイナビが公表している2025年卒の就職企業人気ランキング理系女子の総合ランキングを見ると、1位・味の素、2位・カゴメ、5位・日清製粉グループ、6位・キユーピー、7位・コーセー、10位・明治グループ(明治・Meiji Seikaファルマ)、11位・アサヒグループ食品、資生堂、ヤクルト本社、16位・アサヒ飲料、日清食品、18位・森永乳業、19位・山崎パン、雪印メグミルク……。このように食品や日用品、化粧品のメーカーが上位に並ぶ。
同じランキングで男子理系を見ると、8位に味の素があるだけで、ほかにはこれらの食品・日用品・化粧品のメーカーはランクインしていない。
理系女子が、食品や化粧品、日用品を扱うメーカーに入社して、商品開発に憧れるのは、大昔からある傾向だ。30年前に、たまたま接した東大や横浜国立大学の修士課程の理系の女子学生も「食品メーカーに就職したい」「化粧品会社に就職したい」と口々に話していた。
そのため、理系の女子からしたら、東大の理IIは希望の業種へ入り口に見えるのかもしれない。また、東大の薬学部は薬剤師になるというよりは、製薬会社で研究開発職に就くケースが多く、それも女子学生からすると「就職先が見えている」ことから魅力的なのかもしれない。そして女子の場合、たとえ理系を選択しても、工学部を敬遠するのは全国的な傾向だ。工学部からの就職というと、機械メーカーやIT企業が中心となるが、それらが女子からすると「就職してからなにをやるのか見えてこない」のかもしれない。女子に不人気の工学部の定員が飛びぬけて多いのだから、東大の女子学生率は低くなって当然だろう。