《東京都内では日比谷高校や西高校など都立トップ校が中高一貫化されずに残っていますが、うちの子には無理そうで、そこそこの進学校を目指せればいいなと思っていたのですが、今は地元の進学校が中高一貫化され、さらに、高校からの募集が停止されてしまいました。私立の中高一貫校も高校から募集する学校がどんどん減っています。目指せる学校がないような気がして中学受験に挑戦することにしたのですが、高校からの受験だと選択肢が少なくなっていませんか》(50歳、会社員女性)
近所で受験できる公立の進学校が中高一貫化したとしても、「中学受験しか選択肢がない」ように思い込むのは早計だと東田氏は言う。
「保護者世代の方が高校受験した頃は、東京には学区制が残っていたはずです。学区内で受けられる都立高校は10校くらいで、『偏差値がいくつならこの学校』と自動的に決められるような状況でした。
だから、地元の進学校が中高一貫化して、選択肢が減ったように誤解されていると思いますが、今は学区制が廃止されて、都内にある約180校のどこでも受けられます。進学可能な学校はとんでもない数になっていて、むしろ選択肢が多すぎて、どこの高校を選べばいいかで、皆さん悩まれています。
都立の中高一貫校に高校から入れなくなったという問題についても心配ありません。高校からの募集を停止すると、行き場を失った学力上位層がその近くの高校に集まり、その学校が進学校化するのです。具体的には、都立両国が高校からの募集を停止したら都立小松川が、都立南多摩が募集停止したら都立昭和が、それぞれ大学合格実績を大幅に伸ばしました。
ですから、『子供に合った高校がないのでは?』という心配はまったく不要です」(東田氏)
以前はほとんどの自治体で学区制を導入していたが、少子化で生徒数が減っているため、高校の統廃合とともに学区制を廃止する自治体が増えている。昔に比べれば、公立高校受験の選択の自由度ははるかに上がっていると言えそうだ。
次回は、中学受験から撤退した場合、今後どのように学習を進めるべきかという相談に、東田氏が答える。
(第5回に続く)
【プロフィール】
東田高志(ひがしだ・たかし)/Xで 4.6万 フォロワー(2024年7月現在)のいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20 年以上のキャリアを持つ塾講師。学校と塾の変化を見続け、現場を知り尽くし、小・中学生を教えてきた。教え子のなかには、中学受験の撤退組、全滅組がおり、中学受験が合わなかったと感じる子どもをたくさん見てきた。2024年5月、保護者からの疑問に答える『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)を上梓。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問し、区議会議員とのコラボイベントも開催している。
取材・文/清水典之(フリーライター)