中学受験撤退は「英語の学習」を始める好機
「たとえば、算数で言えば、『割合・比』や『図形』の2単元に焦点を当てて、私立中堅校を受験する程度の難易度で学習を進めると、高校受験やその先の理系進学の際に必ず役に立ちます。“図形はセンス”といわれますが、学ぶ時期が早ければ早いほどセンスが身につき、得意になります。鶴亀算とか旅人算とか、中学受験特有の範囲は飛ばして構いません。塾のカリキュラムに縛られずに、じっくりと『割合・比』と『図形』に絞って学ぶことを奨めています。
また、国語や算数が苦手だという子でも、歴史は好きだと言うのであれば、“歴史だけは難関中学レベルの勉強をしよう”という形で勉強をしても構わないと思います。先ほど述べた通り、勉強の負荷を下げて、自立的に学習する習慣を身につけさせることが何より大事だと思います」(東田氏)
中学受験の撤退を機に、大学受験やその後のキャリア形成に役立つ教科に力を入れることもできるという。
「中学受験ルートから高校受験ルートに変更したのなら、もう一つ、小学生の内に始めたいのが、英語の学習です。高校受験は、英語ができると非常に有利に進めることができますし、大学受験やその後のキャリア形成においても役に立ちます。
中学受験層の場合、国算社理4教科の負荷が重すぎるため、英語にまで手をつけられないうケースが多く、英語学習は中1からのスタートになりがちです。だから、私立の中高一貫生には意外に英語が得意でない子が多い印象です。つまり、小学生の頃から英語学習を進めていけば、リードすることも可能なのです。
中学受験から撤退するというと、言葉の響きにネガティブな印象がありますが、そうではなくて、プランAからプランBに変更するだけで、目的地は同じと考えましょう。子供の適性に合わせてルート変更しただけだと捉えてほしいと思います」(東田氏)
子供の幸せを願い、より有利な立場で社会に出られるようにと、中学受験を始めたが、親子関係にヒビが入りそうな出来事ばかりが起き、親たちの多くが「こんなはずではなかった」と戸惑っている。
そんな親に対して東田氏は、目的地に到達するルートは必ずしも1つではないとアドバイスする。戦況が不利ならいったん撤退して、もう一度建て直す決断をするのも親の務めであるのかもしれない。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
東田高志(ひがしだ・たかし)/Xで 4.6万 フォロワー(2024年7月現在)のいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20 年以上のキャリアを持つ塾講師。学校と塾の変化を見続け、現場を知り尽くし、小・中学生を教えてきた。教え子のなかには、中学受験の撤退組、全滅組がおり、中学受験が合わなかったと感じる子どもをたくさん見てきた。2024年5月、保護者からの疑問に答える『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)を上梓。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問し、区議会議員とのコラボイベントも開催している。
取材・文/清水典之(フリーライター)