相続人に対する贈与以外は、生前1年以内の贈与だけが遺留分基礎額に含まれます。そこで内妻に、生前贈与をして1年生き延びれば、その贈与を理由に、内妻が遺留分侵害額の請求を受けることはありません。健康に自信があるなら、生前贈与も対策の一つといえます。
しかし、難点は贈与税です。相続税より税率が高いため、持ち出しが増えます。なお、贈与者と受贈者が贈与によって、遺留分を侵害することを知っていた場合には、1年の制限がなくなりますが、半分以下なら遺留分侵害になりません。税金の問題がなければ、生前に贈与しておくほうが安全です。
遺言で遺産の半分を渡す場合、信頼できる人を遺言執行者に指定し、公正証書遺言にしておくと、遺言執行が円滑に進みます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年7月19・26日号