このたすき掛け遺言書のなかで必ず記載しておくべきなのが、「遺言執行者」の選定だと村田氏は強調する。
「遺言執行者は法律上、遺言書の執行に必要な一切の権利や義務を持ちます。これが明記されていない遺言書だと、金融機関などで相続の手続きに応じてもらえないケースがある。新たに遺言執行者を決める場合は家裁で選任申し立て手続きを行なうことになり、用意する書類も複数になる。余計な手続きが増えることになるので、遺言書に記載しておくべきです」
遺言書は自宅で保管せず、法務局に預けるのが良い。司法書士法人東京さくら代表で司法書士の三浦美樹氏が言う。
「これまで自筆の遺言書を自宅で保管して紛失するケースがありましたが、2020年7月から法務局で自筆の遺言書を保管できるようになりました。法務局に預ければ改ざんや紛失の恐れがないうえ、死亡した時に遺言書の存在を伝える人物を3人まで決められる。死亡届と連動して必ず連絡が行くうえ、遺言書の検認も不要になります。預けない手はありません」
手続きは、法務局の窓口で申請書を受け取り、自筆の遺言書と本籍地記載の住民票、本人確認書類とともに3900円の手数料を提出するだけ。
プロにすべてを託す「死後事務委任契約」という選択肢
自分が死んだ後、身内に課される膨大な手続き。これを配偶者や子供に強いるのは忍びない──そう考える人は多い。
そこで活用したいのが、「死後事務委任契約」だ。
「亡くなった後に事務作業や身辺整理を、第三者に代行してもらう契約です」(村田氏)