人材サービスの大手「アデコ」の池谷千枝さんも次のように語る。
「定年後、『まだフルタイムで働きたい』と弊社に登録いただくかたが増えています。登録者の中で就業している年代も、いまは40~50代が最多層。シニアといっても皆さん若くて能力もあります」
これから100年生きると仮定すると、定年を迎える60才では、今後20~30年働く可能性がある。「そんなに働くの!?」という声も聞こえそうだが……。
「仕事を続けるということは、生きるためだけでなく、健康維持に不可欠なものでもあると思います」とは、シニア登録者を多く抱えるマンション管理の受託・請負会社「うぇるねす」の創立者、下田雅美さん。
では50代からの“天職”と出合うためにはどうすればいいのか? 転職界隈の最新動向を踏まえて、自分に合った働き方を探すための3つのステップについて考えてみよう。
【ステップ1】どんな仕事があるのかを知る
まずは短時間でも働けるパート・アルバイト(以下、アルバイト)の分野から。
「シニア層への求人が多い三大職業は、軽作業(倉庫の仕分けなど)・警備・飲食です」(ディップの進藤さん・以下同)
前者の2つは従来からシニア雇用が多いものだが、飲食については、特に女性の求人が増えている。
「たとえば、モスバーガー、イオン、すかいらーく、鳥貴族などは、シニア採用を打ち出し、積極的に登用しています」
いずれも住宅街に出店していることが多く、地元のシニアを採用し、長く働いてもらいたいのだという。
ブランクがある人でも採用してもらえるのだろうか。
「もちろん。過去に職歴のあるかたは歓迎されます。なぜなら、社会人としてひととおりの教育を受けているので、『欠勤するときは電話で伝える』などを一から教える必要がない。笑い話みたいですが、そこから教育する場合も時にはある。先述の企業はシニア用マニュアルの作成や研修も行っており、未経験者もトライしやすいでしょう」
今後ますます増えると予想されるのは、介護、医療分野の仕事だという。
「ヘルパーの補助や看護助手は、家事に通じる仕事なので、主婦・主夫のかた向きです」
では、企業でしっかり働きたい人のための仕事は?
「人材派遣でご紹介する場合、就業がもっとも多いのは事務職です。中でも、経理や人事採用、貿易事務など専門的なスキルがあると決まりやすいですね」(アデコの池谷さん・以下同)
スキルがない場合、転職は難しいのだろうか。
「そんなことはありません。たとえば、我々が請け負っている事務センター、官公庁や地方自治体のコールセンターなど、複数で取り組んでいただく仕事はニーズがあります。弊社の社員が業務指導を行うので、未経験でも大丈夫です」