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阪神・岡田監督の“後ろ盾”阪急阪神HD角会長の体制弱体化で監督人事も混沌 「角派」「反・角派」「阪神球団」の三つ巴相関図、まさかの「掛布監督説」も

阪急阪神HD・角和夫会長(左)の去就が監督人事にも影響か(時事通信フォト) 阪急阪神HD・角和夫会長(左)の去就が監督人事にも影響か(時事通信フォト)

 オールスターゲームを挟み、後半戦に突入するプロ野球。セ・リーグは大混戦の様相だが、連覇を目指す阪神では親会社を巻き込んだ“人事”の大きな動きがありそうだ。

「阪急阪神ホールディングス(HD)の角和夫会長(75)が勇退すれば、HDのタイガースに対する影響力に変化が生じる可能性は十分にあります。昨年の岡田彰布監督(66)の復帰は、同じ早大出身の角会長の意向だと言われていますから。今後の後継監督人事の流れも変わってくるでしょう」

 そう語るのは、2001~2004年に阪神球団社長を務めた野崎勝義氏だ。阪急阪神HDは営業収益9976億円の巨大企業グループで、2006年に阪急と阪神という関西私鉄のライバル同士の合併で誕生した。角会長は合併時の阪急電鉄社長であり、20年以上もグループに君臨する経営トップだ。エンタテインメント事業のグループ会社の一つが「(株)阪神タイガース」なのだが、その関係性は複雑だ。

「合併後もタイガース監督の任命権は親会社のHDではなく、阪神タイガース側にありました。阪急が過去に球団(ブレーブス)を手放した経緯もあり、合併で経営形態が変わった際にリーグ側から30億円の預かり保証金を払うよう要求があった。それを回避するため、“タイガースは阪神電鉄に任せる。阪急電鉄は10年間は球団に口を出さない”と誓約書を出したのです」(野崎氏)

 ただ、合併から16年後の2022年オフに球団の“独立性”に変化が生じた。

「矢野耀大監督(55)の後任に球団側は当時二軍監督の平田勝男ヘッドコーチ(64)を推したが、角会長の鶴の一声で岡田監督に決まった。監督人事に阪急側が介入した初のケースとされる。2022年12月には阪急出身者として初めて杉山健博氏が球団オーナーに就任。岡田監督をバックアップするためと見られてきた」(在阪の全国紙経済部記者)

 そうして岡田監督の後ろ盾となってきた角会長が今、不祥事の矢面に立たされているのだ。

「昨年9月に傘下の宝塚歌劇団で起きたパワハラによる俳優の自死事件で批判に晒され、6月の株主総会での角会長の選任賛成率はわずか57%。角会長自身、近々の辞任を示唆し、『来年まではこの体制で』と発言した。角体制の弱体化で、監督任命権が再び阪神側に戻るとの見方が浮上しています」(前出・経済部記者)

 球団の監督人事に阪急阪神HDの意向がどう反映されるのかを同社に聞くと、「各事業所の業務に関わることは、こちらではお答えできない」(広報部)との回答だったが、すでに水面下では様々な動きがあるようだ。

後継を巡る状況はまさに混沌

今後の監督人事は角派、反角派、阪神球団という3者の思惑が絡む混沌が予想される 今後の監督人事は角派、反角派、阪神球団という3者の思惑が絡む混沌が予想される

 岡田監督は今季が2年契約の最終年だ。

「角会長は、岡田監督に後継者を育てるように命じていた。今岡真訪(49)や藤川球児(43)、鳥谷敬(43)らが候補とされ、打撃コーチとして現場にいる今岡の可能性が高いと見られていた。ただ、角会長が失脚して運営の主導権が阪神サイドに戻るなら、元々球団側が推していた平田ヘッドの内部昇格の芽も出てくるでしょう」(阪神OB)

 一方、阪神のフロント経験者は「そう簡単に阪神側に主導権が戻るかはわからない」と話した。

「角会長が力を失い、さらに連覇を逃せば、世論も岡田更迭論に傾く。それに乗じてHD内の“反角派”が台頭する可能性もある。その場合、角会長とも阪神側とも異なる路線を打ち出そうと、掛布雅之さん(69)を担ぐのではないか。

 現役時代の不祥事もあって阪神オーナーのなかには“掛布だけには監督をやらせない”と公言した人もいたが、阪急内の反角派にそのアレルギーはなく、“反岡田”の旗印にもうってつけ。今後の監督人事は、角派、反角派、阪神球団という3者の思惑が絡む混沌が予想されます」

 前出・野崎氏もこう話す。

「今やタイガースはHDにとって重要な収入源。角会長が退任しても、阪急側はタイガースを手中に収めていたいと思うはず。合併後、ホテルや旅行部門は阪急主導の再編・集約がなされたが、球団も同じ道を辿ることになるのではないか」

 巨大企業グループ内のパワーバランスの変化で、人気球団のトップ人事も風雲急を告げている。

※週刊ポスト2024年8月2日号

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