地方分散型と呼べるような未来が人々の幸福度アップに
黙って手をこまねいていては何も変わらない。少子化と人口減少を見据え、私たちはどのような国のかたちをめざすべきか。
広井さんらは日立京大ラボとの研究でAIを活用して、2050年に向けた日本の未来を2万通りシミュレーションした。
「その結果、東京一極集中ではなく、地方分散型と呼べるような日本社会の姿が人口や格差、人々の健康や幸福の面で望ましいとの答えが出ました。出生率が日本でいちばん低い東京に人口が集中するより地方に分散した方が、日本全体として持続可能になるという結果でした」(広井さん)
都道府県別の出生率を見ると、東京都は0.99と統計史上初めて1を割り込んだ。東京に人が集まり続け、一極集中がさらに強まれば、少子化はさらに加速するだろう。
「東京という都市は、より合理的に、より速くをどこよりも追い求め実現してきました。子育ては合理性の対極にあるものですから、東京に人が集まれば集まるほど少子化は進んでいく。韓国・ソウルは東京以上にこうした都市への超流入が進んで、世界でもトップレベルに低い出生率になっています」(水野さん)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の小幡績(おばたせき)さんも「今後の日本のポイントは地方」と言い添える。
「もちろん移動は自由ですが、地方が高齢者ばかりになって地域に根づいた文化や伝統、職業などの継承者がおらず、ただ衰退していくのは問題です。地方の国立大学をテコ入れしていい教育を受けられるようにするなど、地方に人がとどまる仕組みが必要でしょう」
※女性セブン2024年8月1日号