「経済的な不安定」「子育てと仕事の両立の難しさ」「賃金格差」──少子化にまつわる議論では、まるでこの国がいま、“お先真っ暗”で未来への不安を抱えているかのようなワードばかりが並び、現役世代にそこはかとなくプレッシャーを与えている。しかし、少子化によって人口減少する日本の未来は、本当に“最悪”といえるのだろうか。加速する少子化がもたらす“この国の新しいカタチ”を考えていきたい。【全4回の第4回。第1回から読む】
生活機能を集約し効率化した「コンパクトシティ」
少子化と人口減少が進むなかで、地方を創生する取り組みとして注目を集めているのが「コンパクトシティ」の実現だ。
コンパクトシティとは住まい・交通・公共サービス・商業施設などの生活機能をコンパクトに集約し効率化した都市のことで、とりわけ過疎化する地方において整備が期待されている。
いち早く実現に向けて動き出したのが富山県富山市で、2006年の中心市街地活性化法などの改正を追い風に、コンパクトシティへの転換を進めた。富山市役所活力都市創造部都市計画課長の佐野正典さんが話す。
「富山市は地形が平たんで広く、道路整備率が高いため郊外の方にどんどん町が拡大した結果、市街地が空洞化しました。このままではさらに空洞化が進むとの危機意識から、市町村合併が大きく進んだ2005年頃からコンパクトなまちづくりの取り組みがスタートしました」(佐野さん・以下同)
生活に車が欠かせない地方では、公共交通機関が衰退していくケースが全国的にも問題視される。富山市でも公共交通の活性化は、まちづくりの大きな柱となった。
「バスの路線や鉄道路線を生かしていくというのが取り組みの主体でもあります。それをもって沿線への移住促進、そして中心市街地を活性化させていくというのが大きな3本柱です。公共交通の活性化については富山ライトレールという路線を皮切りに、LRTネットワーク(小型で軽量な車両を簡易的な軌道で走行させるシステム)の構築を進めています。交通系ICカードの導入やおでかけ定期券事業などソフトとハードの両面からの取り組みで、利用者は増加に転じました」