企業概要
ワキタ(8125)は、同社と連結子会社15社で構成される大阪の機械商社。
主に、土木・建設機械、荷役運搬機械等の販売とレンタル(建機事業)、カラオケ機器・介護用品等の販売とレンタル(商事事業)、そして不動産の販売と賃貸事業(不動産事業)を展開しています。
1949年の創業で、元々は舶用機械の販売・修理から始まりました。戦後復興期を経て事業領域は土木・建設機械へと広がり、さらに建築用石材、AV機器、環境関連機器と拡大し、多彩な商材を取り扱う商社に変遷を遂げました。2019年には介護事業へ参入し、現在では、建設機械・土木機械の販売・レンタルをはじめ、通信カラオケや介護用品・介護機器等の販売・レンタル、オフィスビルの賃貸やホテル経営まで幅広い分野で事業を展開しています。
事業の中心は、建機事業で、2024年2月期においては売上高の82%を構成しました。土木・建設工事現場で使用する小型建機から大型建機まで、用途に応じたあらゆる建設機械を販売・レンタルしています。
全国70以上のネットワークを通じて工事開始から終了までグループの各拠店がサポートしています。「MEIHO」のブランドで発電機や蓄電池、洗浄機や送風機など様々な小型機の製造販売も行っています。商品開発から販売、そしてリース・レンタルまで総合的に手がけることができる体制となっており、競争力高める技術提案にも繋がっています。
商事事業では介護用ベッド・車いす・手すり等介護用品および機器の販売とレンタルを行うほか、カラオケ事業者にカラオケ機器を提供しています。売上高構成比は10%でした。
不動産事業では、不動産(オフィスビル、マンション等)の賃貸事業や戸建分譲住宅等の販売を行うほか、ホテル運営を行っています(ホテルコルディア大阪本町、ホテルコルディア大阪の2件)。売上高構成比は8%と小さいものの、利益率が29%と高く、全体利益の37%を構成するのが特徴で、安定収益源として業績を支えています。
コスト最適化に寄与する建機レンタル市場は拡大傾向
JDID社によると、建機レンタル市場は近年拡大を続け、2023年度に約1.3兆円に達したとされました。建設業界では、特にリーマンショック以降、世界的に所有から利用へのシフトが進みました。レンタルだと購入費用が要らず、置き場所もメンテナンスコストもかからないので、コストを最適化できるからです。日立建機によると、レンタル比率は先進国で50%に達していると言います。
今後もコスト最適化ニーズによる需要増が見込まれ、国内では、国土強靭化、老朽化したインフラのメンテナンスと整備、人手不足を背景とした建設のICT化、といったところで需要増が見込まれます。ほかにもAI市場の成長に伴うデータセンタ―需要や工場の国内回帰などからの需要拡大が予想されます。
成長ポテンシャル高まる建設ICTの分野に注目
こうした事業環境のもと、同社では、新中期経営計画(2023年2月期~2025年2月期)で「売上高925億円(2022年2月期比+23.5%)、営業利益80億円(同+45.5%)、EBITDA140億円(同+20.7%)、ROE5.0%(同3.7%)」を目指します。
主力の建機事業では、売上高823億5000万円(2022年2月期比+29.6%)、セグメント利益58億2500万円(同+48.2%)が目標です。
目標達成に向け、同社は、レンタルネットワークの拡充、建設ICTの強化、介護事業の拡充、人材戦略の4つを成長戦略として掲げました。
注目したいところでは、ネットワークの拡充と建設ICTの強化です。これにはM&Aを含めた強化策が打ち出されており、3年間でM&Aに150億円、新店開設に45億円の投資枠が設けられています。
建設ICTの領域では、i-Constructionを全面的にサポートする体制を整えており、例えば角度センサーとGNSS受信機を装着することで油圧ショベルやブレードの位置と方向、角度を管理する機器や、測量サービスを提供しています。現場に適切な機器・測量方法の提案から3次元設計データ作成、そのデータを使った最適な建設機械の提供、施工管理まで、ワンストップで提供しています。
土木建設業界で人手不足が慢性化する中、工期を格段に短くできる建設のICT化は、2016年度から国土交通省によって推進されている国策です。
2019年には、工事測量や測量機器の販売・賃貸を手がけるCSS技術開発を買収し、「i-Construction」への対応力をアップさせました。CSS技術開発は、3次元測量、MMS(モバイルマッピングシステム)測量、GPS測量、ドローン測量など様々な技術を用いた最新の測量技術と解析技術を持つ企業です。建機事業の中長期的な成長ポテンシャルを高めたM&Aだったと思います。
この建設ICT強化に、ネットワーク展開の推進を合わせて全国で提供できる体制とするのが狙いです。今期は、福島、新潟、千葉に拠点が新設される予定となっています。さらに人材戦略としてICT施工説明者認定資格の取得推進策も打ち出し、建設ICTの領域が強化されています。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。