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知られざる「東京ばな奈」誕生エピソード “中央線の合羽橋”がなぜ東京土産をつくるようになったのか

バナナ型のスポンジケーキの中にはバナナカスタードクリームが入っている(写真提供/グレープストーン)

バナナ型のスポンジケーキの中にはバナナカスタードクリームが入っている(写真提供/グレープストーン)

東京土産の素材になぜバナナが選ばれたのか

 はて、東京土産なのに、なぜ「バナナ」が素材に選ばれたのか?

「当時のご年配の方には高級品や舶来の味で、若者にとっては遠足に持っていった楽しい思い出の味。これから生まれる子供たちにとっては、自分の手で皮をむいて食べる最初の果物になるかもしれません。そうしたみんなの思い出の中にある味なら、特産品の少ない東京で誰もが懐かしく感じるふるさとの味になれるのではないかと考えたのです」

 自然なバナナの風味の実現、見た目も楽しいバナナ型という特殊な形状にするのにも苦労を重ねたという。中に入れるのはバナナカスタードクリームと決まったが、なかなか決まらなかったのが商品の名前だった。

「当時の社内では、『東京○○』はそのまますぎる、わかりやすすぎる、本当にそれで大丈夫なのか、という声も上がっていました。『そんなバナナ』や『バナナ物語』など様々な名前の案も出て、社内で公募もしましたが、しっくりくるものがなかったそうです。最終的には社長が『東京ばな奈、これにしよう』とポンと思いつき、この名前に決まりました。もらう人にとっても贈る人にとっても『東京土産』とわかりやすいことが大事との判断でした」

 ちなみに正式名称は『東京ばな奈「見ぃつけたっ」』とのこと。

「『みんなの楽しい思い出の中に懐かしいバナナの味、見ぃつけたっ』を意味しています。ですので、『見ぃつけたっ』までが正式な名称です。お客様の中には『見ぃつけたっ、ください』とおっしゃる方もいますね」

羽田空港の関係者たちも驚いた催事販売での華々しいデビュー

 1991年11月に発売された「東京ばな奈」は、百貨店に出店していた「銀のぶどう」の店頭に並んだ後、翌1992年のゴールデンウイークに羽田空港の催事販売に登場、“東京土産の主戦場”へのデビューを飾った。いきなり想像以上の売り上げで、羽田空港の関係者が驚いて相次いで見に来るほど大繁盛だったという。

「発売当時は8個入りの商品のみで価格は999円。1000円札を出された時のおつり用にたくさん用意していた1円玉が足りなくなり、商品も置くだけ売れていくような状況で、とにかく売り切れないように社員たちが総出で一生懸命に商品を運んでいました。1992年12月には催事として東京駅のキヨスクでも販売しましたが、こちらも大好評ですごい売れ行きでした」

 羽田空港では1993年9月に常設店をオープンし、出張のビジネスパーソンや帰省の人々が東京土産としていつでも買える拠点ができた。東京駅では1997年12月からキオスクで委託販売が始まり、東京駅でも常に買えるようになった。

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