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【人口激減社会ニッポンの未来】2023年生まれが歩む「苦難の一生」 学校統廃合で小学生から遠距離通学、就職は楽勝でも“仕事は3人分”

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』

「医師不足」から「患者不足」へ

 人手不足は飛行機にも及んでいる。2030年になるとパイロットが大量退職期を迎え、整備士や空港業務従業員の不足も深刻化するので、利用者の少ない地方空港から路線の縮小が始まりそうだ。大都市と結ぶ路線が減便や廃止となれば外国人旅行客を取り込めなくなり、観光業には大打撃となる。地方創生事業にとっても痛手だ。

 人口減少は地域偏在を招くが、人口が減ればさまざまな民間事業が経営的に成り立たなくなる。それは公共サービスも同じだ。水道料金は利用者人口が少ない事業体ほど値上がり率が大きくなるとの試算がある。

 大きな課題となりそうなのが医療機関の統廃合だ。厚生労働省は日本全体では2030年頃には「医師余り」に転じると推計しているが、人口減少が著しい地方では「患者不足」で医療機関の廃業や移転が見られる。今後はこうした動きが各地で相次ぎ、これからの50年、100年をこの国で生きる子供たちには苦難の人生が待ち受ける。

2023年生まれが歩む「苦難の一生」

■【2035年(12歳)】統廃合加速で「20km通学」の6歳児が急増
※日本人小学生(6~11歳):2023年比 36.7%減

 全国の小中学校数は過去10年の統廃合で1割減っている(3万620校→2万7764校)。すでに徒歩圏内に学校がなくなり、「通学距離20km以上」の子供がいる学校は小学校の8%、中学校では14%にのぼる。子育て世帯の流出は避けられない。

■【2043年(20歳)】空前の売り手市場も、公務員の欠員が深刻に
※日本人20歳人口:2023年比 34.6%減

 就職は「超・売り手市場」となるが喜べる話ではない。人口の急減による消費減退で倒産が相次ぎ、職を転々とする若者が増える。民間企業以上に深刻なのは地方公務員で、町村レベルでは充足率65%との予測も。自治体の「消滅」が相次ぐ可能性がある。

■【2065年(42歳)】3人分働かされたうえに“永遠の新入社員”
※日本人20~39歳人口:2023年比 65.5%減

 20~30代減少のシワ寄せが顕著に。2023年の経済規模を維持するためには“1人で3人分”働かなければならないうえに、少子化の進行で“後輩”がいない。管理職クラスの責任を負いながらも、“新入社員”の業務もこなすことに。

■【2070年(47歳)】日本人の店員さんはいらっしゃいますか?
※20~39歳の外国人比率 26.8%

 労働力不足対策のために外国人の受け入れが進むと20~39歳の外国人比率は実に3割近く。「日本語の通じない店舗」も珍しくなくなる。外国人労働力は景気や為替次第で流出する懸念もつきまとい、日本経済がある日突然ストップするリスクも背負う。

■【2090年(67歳)】働き手がいなくなり、大都市も機能不全に
※日本人20~64歳人口:2023年比 81.5%減

 日本経済を支える働き盛り世代がいなくなり、悠々自適のリタイア生活もままならない。利用者がいなくなった電車・バスなどの公共交通機関は続々廃止され、都市機能そのものが停止し、巨大なゴーストタウンになっていく。

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、人口減少戦略議連特別顧問、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。累計100万部突破のベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『世界100年カレンダー』(朝日新書)、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)など著書多数。最新刊は『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)。

イラスト/井川泰年

※週刊ポスト2024年8月9日号

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