国内移動の“大動脈”が丸1日運休する事態となった東海道新幹線の保守用車輌衝突事故。何よりも驚かされたのが、事故が経済活動に与えた影響だ。飛行機の16倍、25万人もの足に影響が及んだとされ、改めて新幹線の輸送力の大きさを印象づけた。この新幹線の莫大な収益に支えられているのが各地方をつなぐ在来線だ。だが、こちらは赤字の深刻化に歯止めがかからなくなっている。その背景には何があるのか?
最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』を上梓したばかりのジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
* * *
日本の人口減少は政府の想定よりかなり速く進みそうである。その影響は、すでにわれわれの身の回りで「小さな変化」として表れ始めている。それは日本崩壊のプロセスの序章でもある。予兆やシグナルを見逃してはならない。
過疎化が進む地方では、ローカル線の利用者が減って赤字が深刻化しているが、これも日本崩壊を警告するシグナルの典型だといえよう。
国土交通省によれば、2000年度から2023年度にかけて46路線(1194キロ)が廃止された。かつて廃線の目安とされた輸送密度4000人未満の路線は1987年度の36%から2020年度には57%に膨らんでいる(JR旅客6社)。2020年度は地域鉄道の98%が赤字である。ローカル線は各社にとって年々重荷となってきているのだ。
2022年にJR西日本とJR東日本が、それぞれ区間ごとの赤字額を初めて公表したが、JR西日本は17路線30区間で248億円(2017~2019年度の平均)の赤字、JR東日本は35路線66区間で693億円(2019年度)の赤字だった。
JR東日本の場合、赤字が最大だったのは羽越本線の村上~鶴岡駅間の49億900万円だ。100円の運賃収入を得るためにいくらの費用を要するかを示す「営業係数」において最も採算が悪かったのは、1万5546円かかる久留里線久留里~上総亀山駅間だった。