大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

マイナンバー制度が抱える問題点を解決できる制度とは? 同性カップル、夫婦別姓、養子縁組にも対応できる「国民データベース」の導入を大前研一氏が提唱

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

LGBTや夫婦別姓にも対応できる「国民データベース」

 個人データベースなら、扶養手当や配偶者手当なども過去の遺物となる。家事は立派な労働だから、専業主婦も個人として夫と同額の年金を受け取れるようにすればよいのである。そうすれば、事実上は家庭内離婚状態なのに、離婚すると十分な年金がもらえないという理由で妻が我慢しながら“仮面夫婦”を続ける必要もなくなる。

 あるいはLGBT(性的マイノリティ)問題。5月に長崎県大村市が男性同士のカップルに対し、続柄欄に事実婚関係を示す際に用いる「夫(未届)」と記載した住民票を交付して話題になった。すでに渋谷区や世田谷区、札幌市、大阪市、福岡市などは同性カップルに対して「パートナー証明書」を発行し、従来は異性カップルだけに与えられていた「家族」としての特権を、法律的には「家族」として認められていない同性カップルにも開放している。

 だが、個人データベースなら事実婚も法律婚も異性カップルも同性カップルも関係ない。AさんとBさんがパートナーであるとデータベース上でつなげれば、それで終わりである。

 夫婦別姓についても同様だ。経団連は政府に対して6月、夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の制度導入に必要な法律の改正を早期に行なうよう求める提言をとりまとめた。これを受けて自民党は休眠状態となっていたワーキングチームの議論を7月に再開させた。

 しかし、私に言わせれば「選択的夫婦別姓」は当然のことである。従来の家族像が崩れ、多様性が重視される時代になっているのに、明治時代以来の戸籍制度を前提にした時代遅れの議論をしている自民党は論外だ。「家族」ではなく「個人」を単位にしたデータベースを作れば、夫婦同姓であろうが夫婦別姓であろうが、どうでもよいのである。

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