2023年の日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子供の数)は1.20と発表されたが、韓国では同0.72となっており、日本以上に少子化が加速している。韓国で超少子化が進む背景に何があるのか、経営コンサルタントの大前研一氏が分析する。
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韓国は日本以上に子供を産みにくい社会だ。根本的に男尊女卑で、かつては“仲人文化”があり、25歳を過ぎた女性を紹介したら失礼にあたるとされていた。実際、1991年の女性の平均初婚年齢は24.8歳だった(2021年は31.1歳)。また、2007年までは日本と同様の「戸主制」による「家」単位ごとの戸籍制度があった。
そういう慣習や制度の弊害が今も根強く残っているため、男女間で社会が大きく分断され、結婚や出産を優先的に考えず、一生独身を選ぶ女性が少なくないのだ。この本質的な問題を解決しない限り、少子化に歯止めはかからないと思う。
また、韓国では2015年頃から若者たちが、就職率・就労率の低さや労働環境の劣悪さなどを非難し、自国を自虐的に「ヘルコリア(地獄の韓国)」と呼んでいる。受験戦争が極めて過酷で、日本の大学入学共通テストにあたる「スヌン(大学修学能力試験)」で成績上位1%の狭き門を突破しなければ3大名門大学の「ソウル大学」「高麗大学」「延世大学」には進学できず、その3大卒でないとサムスン、現代、LGなどの財閥系大手企業や官公庁に就職することが難しいとされる。
そして、財閥系大手企業や官公庁に入らなければ、高給は期待できない。中小企業の給与は格段に低いからだ。つまり、財閥系大手企業に入るか役人にならないと、豊かな生活は保証されないのである。
しかも、人口が集中している首都ソウルでは住宅価格が高騰している。保証金は家賃の10か月分以上が一般的で、ワンルームの平均的な家賃は5万~6万円、保証金は50万~100万円との統計もある。映画『パラサイト 半地下の家族』のように、貧困層の住宅事情は非常に劣悪だ。このため、日本以上に“勝ち組”と“負け組”の「希望格差」が拡大し、韓国では将来に希望が持てなくなって海外に移住する若者が増えている。