さらには養子縁組。今は戸籍に養子縁組であることが記載されるので、実子でないことはすぐにわかる。しかし、個人データベースであれば、養親・養子の関係を実親・実子と同じ関係に持っていくことができる。
教育についても同様だ。日本国憲法は第26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めているが、その権利は子供個人にある。親が誰であろうと関係なく、すべての子供に等しい教育を受けられる権利を付与すべきであり、これも個人がベースなら簡単にできる。
つまり、ここまで述べてきた問題の原因は一様に「家族」を単位にしていることであり、「個人」を単位にしたデータベースを作れば、すべて解決するのだ。使い物にならないマイナンバー制度の禍根を21世紀に引きずっていてはいけない。一刻も早く個人データベースに基づいた新たな基本台帳を作るべきなのだ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年8月9日号