自民党総裁再選を諦めていない岸田文雄・首相は、国民への“撒き餌政策”を次々と打ち出している。6月からの定額減税の次は、いったん打ち切った電気代・ガス代補助金を「酷暑乗り切り緊急支援」として8月分から3か月限定で再開する。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「総裁選目当ての人気取り」と断じる。
「本当に庶民のことを考えているのなら、電気代がかさむクソ暑い7月に補助金をなくしたりしなかったはずです。5月分までで打ち切った補助金を8~10月分の3か月だけ復活させ、しかも10月分は減額するというのだから、9月に行なわれる総裁選が目当てとしか考えられない。よくもまあ、ここまで国民をコケにできたものです」
しかも、電気代はこの4月からの再エネ賦課金引き上げで1世帯平均年間1万6752円上がる。政府は電気・ガス代の「酷暑乗り切り緊急支援」を3か月分合計で約5550円と試算しているが、負担増の穴埋めにはほど遠い金額なのだ。
後でしっかり国民にツケが回ってくる
そして2か月後の総裁選が終われば「もう国民のご機嫌取りは必要ない」とばかりに容赦ない負担増が待ち受けている。
「4月からの森林環境税導入に加え、ガソリン補助金は今年いっぱいで打ち切り。来年度からは先送りされてきた防衛財源の所得税、法人税、たばこ税の増税が控えているし、2026年度からは子ども・子育て支援の名目で健康保険料が全世代にわたって引き上げられる。サラリーマンの場合は加入者1人あたり年6000円程度の負担増です。
いま国民の目の前にぶら下げている減税や補助金は見せかけで、後でしっかり国民にツケが回ってくるわけです」(荻原氏)
岸田首相は就任当初に「所得倍増」を掲げ、2023年を「資産所得倍増元年」と位置づけた。しかし、現実は国民の懐が温かくなるどころか、実質賃金は25か月間連続でマイナス。そのうえ物価高と負担増で国民には“所得半減”の政治が続いている。
※週刊ポスト2024年8月16・23日号