人生後半に待ち受ける最初の難題が、身近な人を見送ることだ。死期に備え、覚悟を持って準備にあたっていても、死後の手続きには多くの落とし穴が待ち受ける。葬儀や各種手続きに追われ、うっかり忘れてしまう人が多いのが、国や自治体の公的制度から支給される「お金」の申請だ。
そのひとつが「未支給年金(未払いの年金)の受け取り」である。死後の手続きに詳しい税理士で社労士の佐藤正明氏が解説する。
「年金受給者が亡くなると、一般的に1~2か月分の未支給年金が発生します。配偶者や子、父母など3親等以内の親族が請求手続きすることで受け取れますが、未支給年金は請求期限が5年と長く『後回しにしているうちに“時効”を迎えてしまった』という人が意外なほど多くいるのです」
年金については「死亡一時金の申請」を忘れる人も散見されると佐藤氏。こちらは年金保険料を36か月以上納めた第1号被保険者が、基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合に「故人と生計を同じくしていた遺族(相続の優先順位がもっとも高い人)」に支給される。
たとえば「すでに母が他界、一緒に暮らしていた父が亡くなった」場合は、子に受給権がある。
2年前に父を亡くした30代男性F氏はこの申請を忘れたひとり。
「死亡一時金の請求期限は2年と短いんです。遺品整理や相続のドタバタに追われるなか、いつかやろうと思っていたら、時効を迎えてしまった。実にもったいないことをしました」
該当者は先送りにせず早めの手続きが必要だ。