長い年月を共に過ごした妻が、まさか自分より先に旅立つとは──妻を亡くした男性の多くは、こう思ったのではないだろうか。伴侶を失った悲しみに沈むなか、否応なく押し寄せる孤独な生活。著名人は最愛の人の死にどう備え、どう乗り越えたのか。コント赤信号の芸人・小宮孝泰さん(68)が、妻の闘病中の備えについて話した。
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妻の佳江(享年42)は、「落ち着いて聞いてね」と前置きをしたうえで、進行性の乳がんであることを明かしました。いまでも忘れない、2001年4月のことです。その前にちょっとした夫婦喧嘩があって、その続きかと思って呼び出されたお店に行ったら、まさかのがんの宣告。言葉を失いました。
それから夫婦で病気と向き合ったのですが、2010年春の腫瘍マーカー検査でがんの骨転移がわかりました。まだ余命を考える段階ではないと思っていたからショックが大きかった。2年ほど経った2012年10月、妻は自分で探した在宅医療の先生に診てもらい、自宅で息を引き取りました。
もちろん悲しみは深かったのですが、最初に彼女の口からがんだと聞いて10年以上過ぎていたので、覚悟はできていました。最後の1年は料理や洗濯、お金の管理など、身の回りのことは自分でやるように心がけました。
妻の味を再現する
妻は身の回りの整理だけでなくホスピスや介護ベッド探しなどすべて自分で準備して旅立ちましたが、そのひとつが料理のレシピでした。きっと、僕がひとりになっても食事に困らないように残してくれたのでしょう。レシピで妻の味を再現することで夫婦の思い出が蘇ります。孤独を癒やすのに役立ちました。