外国為替市場が急変している。7月3日の東京市場で1米ドル=161円台と約37年半ぶりの円安水準を更新した後、8月初旬まで150円前後~160円台で推移していた米ドル/円相場だが、8月5日には一時141円台をつけて円高ドル安に一気に進んだ。この為替市場の急変の背景には何があるのか。今後の相場の値動き、見通しなどについて、元外国為替ディーラーで現在、松田トラスト&インベストメント代表を務める松田哲氏に聞いた。
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8月5日の米ドル/円の大幅な下落の主要因は、円キャリートレードのアンワインド(解消、巻き戻し)と考えます。
円キャリートレードとは、低金利の日本円を借り入れて、金利の高い外貨で運用し、その金利差を享受する手法のことです。日銀が利上げに踏み切るまで、円の政策金利はマイナス~ゼロ水準だったため、高金利通貨である米ドルを筆頭に、ユーロ、豪ドル、英ポンドなど様々な通貨で、大量の円キャリートレードが行なわれていました。
円キャリートレードというと、機関投資家やヘッジファンドなどの資金調達・運用手法と思われがちですが、FX(外国為替証拠金取引)などで円で米ドルなど外貨を買っていれば、それも円キャリートレードと同じこと。米ドル円取引は日本人だけでなく、どの国の人でも誰でもできますから、機関投資家やヘッジファンドに加え、世界中の個人投資家もかなり円キャリートレードをやっていたと思われます。
このような背景もあって円安ドル高が続き、7月3日には1米ドル=161円台まで円安が進みました。そこに、アメリカの消費者物価指数(CPI)発表後の7月11日・12日の2日連続で、政府・日銀が円買い介入しました。11日は1ドル=161円台から一時4円以上も円高ドル安に向かいましたが、この2日間の為替介入が、円高ドル安への反転のきっかけになりました。このあたりから、円キャリートレードを解消しようという動き(アンワインド)が始まり出し、その後1米ドルが155円を割り込んでからは転げ落ちるように米ドル/円が下落してきました。