パワハラの隠蔽や裏金問題など、世の中いろいろな不祥事が表に出ていますよね。真実がどんどん晒される時代に、現実をねじ曲げる自己正当化は最も避けるべきこと。現実を受け入れた誠実な対応力が問われていると思います」
必要以上に謝るのもよくない、とも。
「欧米には自分に非があっても絶対に謝らない人が多い。それはそれでどうかと思いますが、日本の『謙譲の美徳』というか、下手に出て謝りすぎるのもよくない。それを発揮すれば相手が丁重に接してくれるのかというと必ずしもそうではないですから。『すみません』は一度で充分。謝り方ではなく、修正して実害を減らすという実際的な対応にエネルギーを注ぎましょう」
各企業も次々と対抗策を講じている「カスハラ(カスタマーハラスメント)」もまた、まじめが行きすぎた結果なのだろうか。
「すべてとはいいませんが、そういう面があるのはたしか。まじめな人は超自我が強いため、自分自身への要求水準が高くなりがち。当然、相手にも完璧を求めるので、対応が自分の求める水準に達しないと激高する。
わざわざ相手の落ち度を探して厳しく指摘する人もいますが、そうすることで、自分の優位性を確認しているのでしょうね。
ただ、年を取ると感情や衝動をコントロールする前頭葉の機能が低下するという機能的な問題も起こってきますので、そこは分けて考える必要があります」
つらいときこそ肩の力を抜き、「なるようになる」と気楽にいきましょう。
【プロフィール】
片田珠美さん/精神科医。パリ第8大学で精神分析を学び、DEA(専門研究課程修了証書)取得。臨床経験にもとづき、犯罪心理や心の病の構造を分析。最新著書『職場を腐らせる人たち』(講談社現代新書)が話題に。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2024年8月22・29日号