では売れ筋の標準モデル、エアーのボディサイズを見てみましょう。全長4310mm、全幅1695mm、全高1755mm、そしてホイールベース2740mmです。フリード全体のうちの約70%を占めるという人気モデルのエアーだけに、シートレイアウトも5人乗車(2列シート)仕様、6人乗車(3列シート)仕様、そして7人乗車(3列シート)仕様の3タイプから選べ、幅広いニーズに対応しています。なお、エアーには「エアーEX」という装備を充実させた上級仕様があり、フリード人気を牽引しています。
サイズ面で先代ともっとも違うのは全長が45mm伸びたことです。このサイズ延長は、1列目のシート形状を工夫し、ウォークスルーや2列目シートへのアクセス性を向上するなど、さらに使い勝手を高めることに寄与しています。実際に乗り込んで見ると2列目シートのゆとり拡大に加え、3列目シートへの乗り込みが楽になっていると感じました。
アウトドアで試してみたくなる実用性
次に趣味性の強いクロスターですが、こちらには7人乗りの用意はありません。2列目シートが3人掛けベンチシートの5人乗車と、2人掛けのシートが3列の6人乗車の2タイプです。
仮に「5人乗車で十分」と言う人であれば、3列6人掛けよりも、荷室をより有効に使える2列シート仕様がいいと思います。実は6人掛け仕様の3列目を折りたたんで収納する際、床下に格納するのではなく、左右に跳ね上げて荷室の両側に吊り下げるタイプです。すると荷室空間にシートが少しだけ張り出してしまいます。アウトドアでは箱物など四角い荷物を積む機会が多く、デッドスペースが生まれるので、積み込みに少々工夫が必要になると思います。その点、5人乗車は2列目のベンチシートを前方に折りたためばフラットな床が出現し、マットを敷けば車中泊用としてすぐ使うことができます。
広く、フレキシブルに使用できる荷室は縦、横に広く、開口部の高さは1,260mm、床から天井までの高さは1,355mm、そして開口部の最大幅は1,080mmと、かなりゆとりを持っています。また2列シートのクロスターは超低床フロアも特長で、地上から荷室の床の高さは335mmですから、荷物の積み降ろしでストレスを感じることはあまりないと思います。
実はこうした開口部の大きさや床の低さを生かすため、専用のアルミ製スロープを装備した「クロスター・スロープ」という仕様もあります。本来はスロープを利用して労力少なく車椅子を乗せることを主目的にした車椅子仕様です。しかし、今回のフリードはそうした制約を少し取り払い、「アウトドア用のキャスター付きコンテナなどの積み下ろしにも使えます」と明言しています。これまでは車椅子仕様を買うと、それ専用の車両のように考えていました。しかし、アウトドアでの使い方まで提言されると、使い方のアイデアもどんどん出てきます。
スムーズで静かな走りに安心感
こうした実用面で優れたフレキシビリティを示したフリードですが、走りも結構進化しています。ホンダ独自の「2モーターハイブリッドシステム」である「e:HEV」をフリードに初めて搭載したこともあり、売れ行き比率ではハイブリッドが約85%を占めています。先代のハイブリッドモデルより、フリクション(振動)も低減でき、最大熱効率を40%以上引き上げ、より静かな走りと燃費の良さを両立できていました。アクセル操作に対してレスポンス良く反応し、モーターならではの、低速域からの力強い走りを味わうことができます。とくにスムーズで静かな走りはドライバーと言うより、乗員に大きな安心として伝わるはずです。
このハイブリッドの他に1.5Lの ガソリンエンジンモデルも用意されています。さすがにハイブリッド車ほどの静粛性ではありませんが、静粛性は十分に満足できるレベルにあり、その上でスムーズな走りを提供してくれています。いやむしろボディの軽さを生かした軽快な走りを味わうなら、こちらのモデルも悪くはないと感じるほど。もし郊外や地方都市のスムーズな交通の流れの中で乗ることが多ければ、車両本体価格の安いガソリンエンジンモデルを狙うのも十分に「あり」だと思います。
さて、「良い出来」と評判のフリードだけに「買わない理由」を探すという、少々意地悪な見方を持って色々と見てきたのですが、実用でも走りでも、満足度の高さが際立っていました。もし、あえて言うならば、この優等生過ぎるというか「無印良品的」というか、そうした無難さが、気にかかるぐらい……。
と、言い掛かりのような結論を無理にひねり出してはみたものの、すぐに反省。フリードのような存在は、優等生でなければ困るのです。誰もが平均点以上の満足を得ることを目指して、ユーザーのわがままに応えるために最善を尽くしてこそ、存在価値があります。買わない理由探しなどは新型フリードに失礼でした。