8月8日、南海トラフ地震臨時情報が発表され、岸田文雄・首相が責任者となり「1週間程度、日頃からの地震への備えを再確認」が呼びかけられた(15日に呼びかけ終了)。これを受け、テレビ各局は注意喚起を行ったほか、NHKは高校野球中継の時もいわゆる「L字型」で地震情報を出し続けた。こうした事態を受けて、南海トラフ地震の対象エリアとされる地域では宿泊キャンセルも相次いだが、この騒動にため息をつくのがネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。中川氏が、日本人の「ゼロリスク思考」に警鐘を鳴らす。
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今回ネットでは「トラフ脳」という言葉が登場しました。コロナを過度に怖がりマスクを筆頭とした感染対策を徹底し、他者にも強要する「コロナ脳」にかけた言葉です。これまで週刊誌やネットニュースで何度も南海トラフ地震の危険性について記事が出ていましたが、今回ほどのパニックにはならなかった。さすがはテレビの力。
普段から災害に備えて水や食料品を備蓄するのは大切なことです。あとは海に近いところに住む人は「地震が来たら高台に逃げろ」という教えを家族で徹底することも大事です。でも、8月8日、宮崎での地震を受けて「これから1週間注意しろ」って、何の科学的根拠で言っているのですか?
これのせいで水・トイレットペーパー・米の買い占めが各地で発生しました。メディアが危機を煽るとなくなる3点セットです。コロナの時はマスクを求めて大行列ができましたが、とにかく日本人はメディアが煽る危機に流され過ぎる。
あと、今の科学技術水準では、ピンポイントで地震の予測なんてできません! 天気予報だってまだまだ外れることは多いわけで、地震の予測を的中させるなんてハードルが高すぎます。そもそも日本ではどこの地域だろうが地震の恐れはある。だから騒ぎすぎるのはやめなさい――こう私は思う。