「含有量」目標とは別に「摂取量」の勧告も
大手3社が成分表で含有量を開示した商品数と、そのうちトランス脂肪酸が含まれていた商品数の内訳は以下の通りだ。
■山崎製パン:開示数は105商品。うちトランス脂肪酸が含まれるのは11商品(10.4%)
■フジパン:開示数は163商品。うち含まれるのは42商品(25.7%)
■敷島製パン:開示数は263商品。うち含まれるのは151商品(57.4%)
たとえば山崎製パンの「ホワイトデニッシュショコラ」は商品1個当たり0.8グラムのトランス脂肪酸が含まれている。この含有量をどう考えればよいのか。
WHOは2023年までの全廃を掲げた「含有量」の目標とは別に、2003年に「摂取量」についても勧告している。それによれば、トランス脂肪酸の摂取量は、総エネルギー摂取量の「1%未満」が目標とされている。
「日本人の平均的な総エネルギー摂取量で換算すると、『1日当たり約2グラム未満』となります」(前出・井上教授)
同商品を1日に2個食べたとしても2グラムには届かないが、井上教授はこう付け加える。
「『2グラム未満であれば食べても問題ない』という意味ではありません。心疾患、がん、認知機能の低下などといった症状は、その人の生活習慣や持病などによって発症リスクが異なります。人体への有害性リスクが指摘されている以上、摂取しない選択をできる環境は必要です」
(以下、表で「製パン大手3社のトランス脂肪酸が含まれている204商品一覧」を紹介)
トランス脂肪酸を含む商品の多くは「菓子パン」に分類されるが、日常的に食卓に並ぶ「食パン」にもトランス脂肪酸が含まれていることが分かる。
食パンで含有されていた商品は、山崎製パンの「ゴールドソフト」、敷島製パンの「罪なバターブレッド」や「旨み広がるたまねぎブレッド」、「超熟」シリーズなどである。
総務省家計調査によれば、1世帯当たりのパンの購入金額は2011年に初めてコメを上回った。パンが日本人の“主食”となった今だからこそ、正しい知識を持ったうえでリスクに向き合う必要がある。
後編記事では製パン大手3社に、トランス脂肪酸に関する取り組みと、現在でも主要商品に含まれている理由を聞いた。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号