トランス脂肪酸を含まない商品を数多く販売しているにもかかわらず、一部商品では現在もトランス脂肪酸が含まれているのはなぜなのか。
山崎製パンは「トランス脂肪酸の由来は主に『水素添加(硬化処理)』『脱臭工程』『反芻動物(牛、羊、山羊など)』の3種類」があると説明したうえで、「『脱臭工程』に由来する微量のトランス脂肪酸や、天然由来のトランス脂肪酸の除去は、技術的に難しい課題であり、デニッシュペストリーやドーナツなどの油脂含量の多い製品やバター等乳脂肪を含有する一部の食品では1個あたり1g未満のトランス脂肪酸を含んでいる状況です」(広報・IR室)と回答した。
そのほか2社の回答は次の通りである。
「トランス脂肪酸の使用量を極力少なくするために、原料メーカー様と協議し、原材料のトランス脂肪酸含有量は100g中5g未満(製品1包装あたり2g未満を基準)としています。現在、トランス脂肪酸を含有しない製品にすべく、国の基準に準じ対応しております」(フジパン広報部)
「トランス脂肪酸は牛などの反すう動物の胃の中でも生成されるため、肉や乳にも含まれており、乳の加工品にも含まれております。このため、バターなどの乳加工品を多く使用する商品にもトランス脂肪酸が含まれております。私どもでは社内基準を設定し、商品に含まれるトランス脂肪酸量がこれを下回るように管理しています」(敷島製パン総務部広報室)
3社とも「ホームページに書いてある」
ただ、この現状について同じ製パン業界からも疑問を呈する声がある。無添加パンの製造・販売を行なう株式会社味輝の代表・荒木和樹氏はこう指摘する。
「サクサク感やしっとり感といった食感の向上やコストの面で、大手メーカーではトランス脂肪酸を生み出す水素添加した植物油の使用を続けています。しかし、現在は製油メーカーの努力もあり、トランス脂肪酸の発生を抑える油脂はいくつもある。それらを使用すれば、トランス脂肪酸を含有しないパンを作ることは十分に可能です。できるのにやっていない、これが大手製パンメーカーの現状なのではないかと私は考えます」