田代尚機のチャイナ・リサーチ

南海トラフ地震臨時情報や対日感情の悪化がインバウンド消費にどう影響するか? 中国での受け止められ方

インバウンド消費への影響は(東京・浅草。時事通信フォト)

インバウンド消費への影響は(東京・浅草。時事通信フォト)

 日本の株式市場では度々、インバウンド銘柄が相場の焦点となる。具体的には、J.フロント リテイリング(大丸、松坂屋、パルコなど)、三越伊勢丹ホールディングス、高島屋、松屋などの百貨店や、ラオックス、ビックカメラ、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(ドンキ、ユニー、長崎屋など)といった専門店、そのほかオリエンタルランド、日本航空ビルディング、資生堂、JR各社など、訪日旅行者の増加が業績にプラスの影響を与えるような消費関連の一角だ。

 少子高齢化や、その結果でもある経済の低成長(実質所得の伸び悩み)、産業の成熟化による競争の激化などから、インバウンド銘柄を取り巻く事業環境は決して穏やかとはいえないが、そうした中で、インバウンド消費の拡大はありがたく、業績面、特に利益面での貢献は大きい。

 昨今のインバウンド消費好調の要因は、2023年4月の訪日入国規制撤廃に、円安の進行が重なったことなどが挙げられよう。2024年上半期の訪日外国人客数は65.9%増と急増している。国別では新型コロナが流行する前には訪日外国人客数で長年首位をキープしてきた中国が415.8%増と急回復しており、韓国に次いで第2位に浮上している(国土交通省観光庁統計より)。以下は、台湾、米国、香港、タイと続き、アジアからの訪日客数が全体の約8割を占めている。

 また、4-6月におけるインバウンド消費額(速報値)をみると、73.5%増の2兆1370億円で、四半期ベースで過去最高を記録した。国別では中国本土が全体の20.7%と最も大きく、米国(13.0%)、台湾(12.4%)、韓国(10.4%)、香港(8.2%)を大きく引き離している。中国の“爆買い”はかつてほどではないが、それでも中国からの訪日客の単価の高さは際立っている。

 2019年同期比でもインバウンド消費額は68.6%増と高い伸びを示しているが、中国に限れば4.8%減で、依然として回復が遅れている。今後、中国が対日ビザ発給を免除したり、現在は政策効果で国内旅行が好調だがそれが一巡したりすれば、中国からの訪日客が大きく増加し、全体のインバウンド消費を更に牽引する可能性もありそうだ。

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