田代尚機のチャイナ・リサーチ

南海トラフ地震臨時情報や対日感情の悪化がインバウンド消費にどう影響するか? 中国での受け止められ方

ネガティブ要因があっても中国からの訪問者数は急増

 中国でも局地的にではあるが、大地震(唐山市、四川省アバ・チベット族チャン族自治州?川県など)が発生している。ただ、甚大な被害を被った大きな要因として、安全基準の低い建造物が多かったということが広く知られている。日本が普段から地震対策をしっかりしていることが度々報じられていることもあり、比較的冷静に受け止められているようだ。また、今回の臨時情報は実際に南海トラフ地震が発生したわけではなく、注意が促されただけであり、それも発表から1週間後の8月15日17時には解除されている。

 そのほかの悪材料として、対日感情の悪化も懸念される。パリ五輪で卓球女子選手が「特攻資料館(知覧特攻平和会館)に行きたい」と語ったことも、中国では「戦争を美化し、侵略された側の心情を解さない発言」と捉えられたようで、物議を醸している。

 東京電力は昨年8月以降、福島第一原子力発電所から出た処理水の放出を断続的に行っているが、これに対して中国当局は日本を批判し続けており、汚染水は危険だとする意識が一部の中国人に刷り込まれている。

 もっとも、こうした政治的なネガティブ要因があって、さらにビザ取得のための手続きが必要だといった不便さもある中で、中国からの訪問者数は足元で急増している。そうした現状を考えれば、卓球女子選手の発言も含め対日感情の悪化がインバウンド消費に与える影響は軽微ではなかろうか。

 極端な円高に振れない限り、インバウンド消費の好調はしばらく続きそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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