住まい・不動産

定年前後で親が遺した家が手に入っても持て余すだけ… 「1人暮らし高齢者」の増加が空き家問題を深刻化させる

「1人暮らし高齢者」が増えれば空き家問題にも影響か(イメージ)

「1人暮らし高齢者」が増えれば空き家問題にも影響か(イメージ)

 政府は2023年の法改正で、倒壊の恐れがあるものや衛生上有害な「特定空き家」の前段階にある空き家を「管理不全空き家」と位置付け、固定資産税の軽減特例の除外対象に加えることとした。さらに、2024年4月からは不動産の相続登記を義務化した。こうした施策により、全国各地で空き家を管理・活用する動きが広がっているものの、空き家は今後もさらに増える見通しだという。なぜ空き家の増加を抑えられないのか──。

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 今後、空き家を増やす要因は大きく2つある。1つは、「所有者が住むことを目的としていない住宅」の増加だ。賃貸用や売却用の空き家が多いのである。

 住宅・土地統計調査(2023年10月時点)で空き家総数が過去最多の899万5200戸を記録したといっても、これには賃貸・売却用や別荘などが514万2500戸(うち別荘などは38万2900戸)含まれている。居住者や利用者がいない実質的な「放置空き家」は385万2700戸にとどまる。いわば、供給過剰と言える状況なのだ。

 住宅デベロッパーにしてみれば「需要があるから建て続けている」ということだろうが、少子化で住宅取得の中心世代である30~40代が減少傾向にあるのだから、一方で空き家が増えるのは当然だ。

 人口減少下でも需要が拡大している背景には日本人の“新築信仰”の強さに加えて、物件価格の上昇が見込める大都市の中心市街地などの物件に国内外の投資マネーが流れ込んでいることがある。地方の年配の富裕層が相続税対策として大都市などでセカンドハウスを購入する動きが大きくなっていることも需要を押し上げている。

 投資マネーが大都市の物件に流れ込んでいることは、三大都市圏の7都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県)の空き家の3分の2が賃貸や売却用で占められていることが証明している。これらの中には思うように売り抜けられず、“塩漬け”となっている物件も含まれよう。このような「所有者が住むことを目的としていない住宅」もまた「放置空き家」に転じやすい。

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