「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という構造からの転換
「より年配の高齢者」の増加は社会保障費の膨張に直結するため、政府は早くから年金、医療、介護について負担増とサービスの縮小の両面からの改革を進めてきた。
だが、社会保障費の自然増の伸びを抑制する手法には限界がある。度を越せば制度として機能しなくなるためだ。そもそも利用者増が大きすぎるため、伸びる分を改革による抑制分では賄いきれない。
一方、出生数の減少は政府の想定を上回るスピードで進んでおり、現役世代が高齢者を支える現行の社会保障の仕組みは早晩行き詰まる。
そこで、政府が「次なる手」として考えたのが全世代型社会保障である。「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という構造を改め、年齢を問わず個々の負担能力に応じて支える形にしようというのだ。
政府は75歳以上の人に対し、後期高齢者医療制度の保険料引き上げに加え、出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げるための財源の一部も負担させた。さらに、医療費窓口負担を原則2割に引き上げる構えだ。
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