ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が日本テレビのインタビューに答えて、「このままでは日本人は滅びる」と発言したことが大きな反響を呼んでいる。人口減少が急激に進む一方、労働生産性が低いままであるため、今後日本はやっていけなくなるというのが柳井氏の主張だが、現実問題として“日本崩壊”はかなり進行しており、もはや手遅れとの見方もある。果たして“崩壊”を回避するためには、どうすべきなのか?
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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日本社会が目に見えて崩壊を始めている。要因は、言うまでもなく人口減少だ。
あらゆる業種で人手不足が拡大していることは多くの人が知るところである。大都市においても運転手のやり繰りがつかず路線バスの廃止や縮小が進み、従業員がいないという理由で店舗は臨時休業を余儀なくされている。大学の募集停止や小中高校の統廃合に加え、地方では店舗の撤退が相次いでいる。交番の縮小再編まで始まった。
高齢者はまだ増え続けており、現役世代はさらに減っていく。高齢化で社会保障費は伸び続け、「五公五民」と言われるまで上昇した国民負担率は天井知らずだ。
名目GDP(国内総生産)は2025年にはインドにまで抜かれて5位に転落する見通しで、日本の国力の陰りは覆い隠し難くなってきた。最近の円安も、単に世界の経済事情だけが理由とは思えない。円の信認が揺らぎ始めていることが底流にあるのではないのか。日本の未来を悲観する若者たちが国外への脱出を図る動きも目立ち始めた。
ところが、政府も地方自治体も対応がことごとく後手に回っている。的を射ていない対策が幅を利かせ、効果が表れるどころか、むしろ状況を悪化させる政策が目につく。