2023年の日本人の年間出生数は過去最低の72万7277人(概数)を記録した。出生数の実績値は、すでに政府の予想をはるかに上回る激落ペースとなっている。2019年から2023年にかけて急落し、この5年間の出生数の対前年下落率は平均「マイナス4.54%」である。
この出生数の減り方を基に試算をすると、日本人人口は2045年までに1億人を割り込み、2070年に6220万人とほぼ半減する。2120年は1500万人ほどとなり、日本は「小国」に変わり果てる。ベストセラーシリーズ『未来の年表』の著者で新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』を上梓する河合雅司氏が、その打開策を提示する。【前後編の前編。後編を読む】
量的成長モデルの企業は成り立たない
このままのペースなら2070年に日本人は半減し、2120年には9割減──しかもそのシナリオは変えようがない。ところが、「現状維持バイアス」に支配された多くの日本人は、「ダチョウの平和(注:現実に発生している出来事や危機を直視せず、それが存在しないかのように振る舞うことの比喩表現)」を決め込んでいる。
地方自治体の消滅可能性を指摘し社会に波紋を広げた民間組織「人口戦略会議」は、「2100年に8000万人」との目標を掲げているが、あまりに現実味がない。
いま日本がすべきは、根拠なき楽観論に逃げ込んだり、空虚な意気込みを叫んだりすることではない。「人口が減ること」を前提として、それでも経済成長する社会への再構築である。それこそが「真の人口減少対策」だろう。
何をすればよいのか。具体策については最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』で明らかにしたので読んでいただきたいが、要点をかいつまんで紹介しよう。
現在、人手不足がクローズアップされているが、人口減少における最大の危機は消費者不足による内需の激減である。
それは、国内マーケットをあてにした量的成長モデルの企業が成り立たなくなるということだ。70万人ペースで20~64歳人口が減り続けているのだから、どう考えても現在の事業をすべて持続させることはできない。