まだ日本の勝ち筋は残っている
「現状維持バイアス」を取り除くには、大切に守ってきたものをひとたび否定するところから始めなければならない。
過去の成功体験はもとより、捨てがたい伝統やこだわりもその対象となる。多くの人が価値観の変化を求められよう。国土の在り様も大きく変えざるを得ない。日本が勝ち残るための改革を進めれば、既得権益を手放さなければならない人も出てくる。これまでの成功体験の否定には強い抵抗が予想される。だが、人口減少スピードの速さとその影響の大きさを考えれば荒療治は避けて通れない。
私は人口減少に伴って起きる弊害を「静かなる有事」と名付け警鐘を鳴らし続けてきた。以来20年余が過ぎ、多くの選択肢は過去のものとなってしまった。だが、万策が尽きたわけではない。まだ日本の勝ち筋は残っている。人口が減ることをむしろチャンスとして活かし、「縮んで勝つ」ことだ。
日本人がむこう100年間で8割も消えるという激烈な人口減少は、わが国始まって以来の「最大の国難」だ。国家が残るか消えるかの瀬戸際にあるのだ。われわれは残された力を振り絞り、大一番に打って出て勝利するしかない。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。