なぜ、そこまでするのか?
「介護が必要になっても自分の部屋でお住まいいただくことができる体制ですので、できるだけご自身の好みに近い快適な空間に仕上げ、そこでずっと落ち着いて生活していただきたいという思いがあり、そうした希望のリフォームも承っております」(広報担当)
介護依存度が高い場合は施設内の一時介護室に滞在する時もあるが、基本的には介護が必要になっても住み慣れた自室で暮らし、必要に応じて一時介護室を併用して介護を受けられるサポート体制が整っているという。
前出・森坪氏はこう分析する。
「居室の壁紙、床、天井などを全部はがしてフルリフォームして入居者に引き渡すのは、老人ホームでは珍しいです。富裕層向けのホームで、森ビルだからこそできることだと思います。 次の入居者のためにコンクリートむき出しすることを不動産業界では『スケルトン渡し』と言いますが、森ビルはオフィス、レジデンスなどでスケルトンやフルリフォームは得意分野。先に述べたセコムもそうですが、この2つの経営母体がそれぞれ得意分野を発揮しているホームと言えます」
お金があっても誰でも入れるわけではない
共用施設には、天気のよい日は富士山も見えるスカイラウンジ、ライブラリー、シアタールーム、アトリエ、陶芸工作室、トレーニングルーム、サロンなどが揃う。アクティビティやイベントも多彩で、著名なピアニストを招いたコンサートやバレエ公演、寄席などをはじめ、過去にはヘリコプタークルーズツアーも開催している。名所とレストランを巡るグルメバスツアーも人気だとか。
至れり尽くせりの超高級老人ホームだが、70歳以上でどれだけ資産や高い社会的地位があっても、誰でも入れるというわけではない。入居条件の1つに「品位」が掲げられている。「サクラビア成城」の入居者としての品位を保ち、他の入居者との共同生活を円満に営むことができることが絶対的な条件なのだという。こうした毅然とした方針も富裕層の支持を長年集め続けている理由かもしれない。
(前編から読む)
取材・文/上田千春 写真提供/サクラビア成城