「網下米は『ふるい下米』『くず米』とも呼ばれる小粒でやや品質が落ちるお米です。煎餅や味噌など加工食品に用いられるほか、主食用米とブレンドされ、自衛隊や自治体食堂などで活用されますが、2023年の収穫量は前年比4割減と、約19万トン減少しました。
網下米の不足は昨年末に判明し、それを必要とする一部業者が代わりに主食用米を買い付けるようになった。結果、本来は一般家庭で消費されるはずの米が極端に不足したのです。網下米の収穫量は作況指数に反映されないこともあり、多くの卸売業者が供給不足に気づいたのは今年2月ごろでした」(常本氏)
くず米を使用する食品に主食用米が使われたことで、米不足に拍車がかかったという見方である。
外食チェーンやコンビニでは変わらず提供された
小売店から米が消える一方、外食チェーンやコンビニではいつもと変わらず商品が提供されていた。大量消費する米をどのように確保していたのか。
「大手の外食チェーンやコンビニ業界は、大量の米を長期契約で押さえるのが一般的。取引のある卸売業者にとっては最大のお得意様であり、万一、米が不足した場合でも、最優先で在庫の確保に動きます。逆に、複数の卸売業者と取引があり、都度、最安の業者から仕入れているスーパーや小売店、飲食店などは融通を利かせてもらいにくく、米を確保するため相当な苦労を強いられたはずです」(常本氏)
そうした中、注目されたのが大凶作や災害に備え、常に100万トン程度がストックされている「政府備蓄米」の放出だ。8月下旬には大阪府の吉村洋文・知事が放出を要請したが、坂本哲志・農水相は「政府介入は米の需給や価格に影響を与える恐れがある」と慎重な姿勢を崩さなかった。備蓄米の放出について常本氏はこう考える。
「仮にその時点で放出が決まっても、市場に出回るのは9月。新米の流通と時期が重なれば、市場の米はダブつき価格が急落、流通が混乱する恐れがありました」
(後編につづく)
※週刊ポスト2024年10月4日号