人生後半戦の「住まい」は、老後資金のことを考えて選択する必要がある。そうしたなかで、自宅に住み続けながら老後資金を捻出する方法がある。自宅を担保にしてお金を借り入れる「リバースモーゲージ」という制度だ。住宅ジャーナリスト・日下部理絵氏が説明する。
「借入額は担保とする自宅の評価額をもとに決められ、毎月などの定期で借り入れできる『年金型』、まとまった金額を一括で借り受ける『一括融資型』、決められた範囲内で随時利用できる『自由融資型』の3タイプがある。契約者が亡くなってから相続人が返済するか、自宅を売却して元金を一括返済する仕組みです。
現状では50代後半や60代から、上は80代前半まで利用できる金融機関もあり、自治体が福祉サービスの一環として扱っているケースもあります」
借りたお金の使い途は、生活資金から自宅のリフォームや建て替え、医療費、施設の入居費まで自由度が高い。そのため、利用を検討する人は増えている。
対象は優良物件が基本
一方で、担保となる自宅の価値や、返済時の金利などが落とし穴となる。
「借入金の上限額は、最大で担保物件の6~7割といわれ、都心の戸建て住宅などの評価が高い物件が中心となっているのが現状です。そうした優良物件を欲しいと思っている子供たちなどの相続人もいるので、家族間で合意が取れていないと揉め事に発展するケースがあります」(日下部氏)
また、金融商品であるがゆえの金利リスクも注視する必要がある。
「リバースモーゲージは月々の利息分の返済が発生します。現在の金利上昇局面では、利息の返済分が思わぬ出費になる可能性がある」(日下部氏)
住み慣れた自宅に居続けながら、老後資金の足しにできる。そんなメリットだけでなく、デメリットを知ったうえで制度を利用したい。
※週刊ポスト2024年10月4日号