自宅を担保に金融機関から借り入れを行なう「リバースモーゲージ(リバモ)」の利用者が増えている。住みながら自宅の担保評価内でまとまったお金を借りることができ、利用期間中の返済は利息のみ。基本的には債務者である本人の死亡後、担保物件を売却して元金を返済する仕組みだ。
借り入れる資金の用途は住宅関連費用だけでなく、生活費や医療・介護費などに使える商品もあり、リバモ利用により当面の生活資金を調達することもできる。毎月の支払いが利息だけで済むことから、近年は住宅ローンの借り換え目的が増えているという。
10年前に金利1.8%で4000万円の住宅ローンを組んだ50代男性が言う。
「毎月13万円弱の返済が厳しくなり、約3000万円の残債分についてリバモで借り換え、前のローンを完済しました。その結果、月の支払いはリバモの利息分の7万5000円に減らすことができ、生活にゆとりができて一息つけました」
ただし、リバモには見逃せないリスクがある。住宅ジャーナリストの山下和之氏はこう指摘する。
「リバモは毎月の返済負担が小さい一方、長生きするほど利息の返済回数が増え、総支払額が膨らみます。さらに、不動産価格が借り入れ時より下落して担保評価額が下がれば、金融機関から差額分の一括返済を求められるリスクもある。今後は、都心の一部エリアを除いて不動産価格が下落に転じると予想する専門家も少なくありません。注意が必要です」
地価下落で差額500万円の返済を求められ…
10年前に担保評価額いっぱいの2000万円をリバモで借り入れ、住宅ローンを返済した男性が嘆息する。
「毎月、利息分の5万円をきちんと返済していましたが、最近になり地価が下落して担保評価額が1500万円になったという理由で、金融機関から差額の500万円を返済するよう求められています。そんな大金を一度に工面する余裕はないので、担保の自宅を売って一括返済するしかありません。住む家を失うことになるので、途方に暮れています」