滑り止めで転倒
溝口氏が指摘するように、先んじて万全なリフォームを行なおうとしすぎると、せっかくの工事が無駄になってしまう。転倒防止のために「床材」を替えたケースを溝口氏が説明する。
「つるつるしたフローリングは足腰が弱ったら滑りやすくなるだろうと、あらかじめザラザラした滑りにくい床材に替えたところ、逆に元気なうちに足が引っかかってしまい、つんのめって転倒してケガをした人がいました。滑りにくい素材で転びやすくなるケースは意外と多いので注意が必要です」
車いす生活を想定したリフォームも、無駄が生じやすいという。
「室内の扉は、手前や奥に開く『開き戸』よりも、横にスライドする『引き戸』のほうが車いす生活には便利です。ただ、引き戸の扉を収納するスペースが取れない部屋では、代わりにアコーディオンカーテンに変更するケースがあります。これもスペースが狭い場合、車いすの車輪に引っかかって通れなくなります。
玄関先の階段にスロープを取り付けて、いざ車いすになると急勾配すぎて自力で昇降できないケースも散見されます。そうした人は、せっかく取り付けたスロープを壊して、車いすを引き上げるリフトを設置することになる。リフトの設置場所をコンクリートで打ち直すには数十万円かかり、痛い出費になります」
※週刊ポスト2024年10月4日号