入店以来、2品目を何にするかで悩んでいた
餃子を2個食べ、3個残した段階で、ビールは空になった。酎ハイを頼む。この店の酎ハイはシンプルで妙な甘さがなく、うまいのを私は知っている。そこに合わせるのは、何か、実は入店以来ずっとこの2品目を何にするかで悩んでいた。チャーシューを挟むか。ピータン豆腐にするか。そうなると最後の締めの麺類や飯類にたどり着けないかもしれない。
私はもやしそばを選択した。炒め物と麺類の両方の要素を楽しむ方法として、焼きそばという選択肢もあったとは思うのだが、この日はタンメンかもやしそばか、で最後まで悩み、結局後者を選んだのは、私は週に一度くらいはもやしそばを食べたいと夢想するほどの、もやしそば好きだからだ。
そしてこの、もやしそばが、酎ハイに合うのである。これも私の持論なのだけれど、汁物で酒を飲むのは、けっこうイケるのだ。うどんや雑煮を肴に日本酒をやる。なんなら味噌汁も日本酒に合う。
もやしそばの汁を啜り、酎ハイを啜り、餡に絡んだもやしをつまみ、酎ハイを啜り、麺を啜り上げて、今度は酎ハイをぐびりとやる。これを2度3度。酎ハイはすぐに空になり、お代わりをもらう。最後に残るはもやしそばの汁と酎ハイのみ。若い頃なら、さらにチャーハンのひと皿がいけた時期もあるのだが、今はもう、そういうわけにはいかない。
ああ、誰か一緒にいれば、もっと頼めるのに……。
ひとりで気ままに飲み始めておいて淋しがったってしょうがないが、誰か呼び出したいのもまた、素直な気持ち。少し酔っている証拠だが、これも昼酒の醍醐味である。
【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』が好評発売中。