次の衆院選に特定する表現で、対象も小選挙区で与党側の候補者を1人に絞る調整にとどまっている。公明党が連立政権に加わったことで、自民党に対する交渉能力が相対的に低下する自由党がどう動くのか読めなくなっていた状況を反映した抑制的な表現である。
また、小選挙区の候補者調整の作業が本格化したのは年を越して、2000年に入ってからで、構築された協力体制も、一部だが小選挙区だけではなく比例代表も加えた自公の相互支援まで拡充されており、合意書のレベルをはるかに超えていた。とはいえ、出発点は1999年の合意書である。
その意味で、1999年の連立政権樹立は、55年の保守合同、左右社会党統一とならぶ日本政治の転換点と言える。
【プロフィール】
柿崎明二(かきざき・めいじ)/1961年、秋田県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、毎日新聞社を経て共同通信社に入社。政治部で首相官邸、外務省、旧厚生省、自民党、民主党、社民党などを担当した。政治部次長、論説委員兼編集委員、菅義偉内閣首相補佐官などを経て2022年より帝京大学法学部教授。主な著書に『検証 安倍イズム──胎動する新国家主義』(岩波新書)、『「次の首相」はこうして決まる』(講談社現代新書)、『「江戸の選挙」から民主主義を考える』(岩波ブックレット)など。最新刊は『権力の核心「自民と創価」交渉秘録』(小学館新書)。