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《選択的夫婦別姓議論》「旧姓を使用できる範囲を拡大すればいい」で不便は解消されない 「旧姓使用を認めない職場は半数以上」の現実、国際社会でも通用せず

旧姓使用が認められないシーンも少なくない(写真:イメージマート)

旧姓使用が認められないシーンも少なくない(写真:イメージマート)

「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」──現在、民法ではこう定められており、結婚を機に約95%もの女性が改姓を余儀なくされている。約30年もたなざらしの状況が続いている「選択的夫婦別姓」の議論。日本の婚姻における“ゆがみの象徴”はなぜ解消されないのか。【前後編の前編】

 過去最多となる9人が立候補した自民党総裁選では、石破茂氏が新総裁に選出されたが、各候補がさまざまな公約について熱弁を振るうなかで、これまで長年、議論が停滞してきたある制度の導入についても注目が集まった。

「選択的夫婦別姓」制度。候補の1人である小泉進次郎元環境相(43才)が、「夫婦別姓を認める法案を1年以内に提出する」と導入に賛成した一方で、高市早苗経済安全保障担当相(63才)は、「戸籍上のファミリーネーム、家族一体とした氏(うじ)は残したい」と反対の立場を強調した。

 両者を筆頭に、候補者らの意見は対立するが、世界を見渡してみると、「夫婦同姓」を強制する日本の現状は“論外”ともいえる事態に陥っているようだ。

30年近く続いている議論

 現在の日本は、結婚すると夫か妻どちらかの姓に統一しなければならない「夫婦同姓」を法的に義務付けている。

 選択的夫婦別姓とは、夫婦が望む場合には、結婚後もそれぞれが結婚前の姓を称することを認める制度だ。一方、これまでのように夫婦同姓も選ぶことができる。

 日本で最初に選択的夫婦別姓制度の導入が検討されたのは1996年のこと。法務省の法制審議会が、導入を求める民法改正案を答申したが、「伝統的家族観」を重視する自民党の保守派が猛反対して実現しなかった。

 さらに、夫婦別姓を認めない民法の規定が「両性の平等」を保障する憲法に違反するかをめぐる裁判も行われたが、最高裁は2015年、2021年の2度にわたって「合憲」との判決を下している。

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