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《選択的夫婦別姓議論》「旧姓を使用できる範囲を拡大すればいい」で不便は解消されない 「旧姓使用を認めない職場は半数以上」の現実、国際社会でも通用せず

 また、夫婦同姓であると、結婚や離婚、再婚のたびに名字が変わり周知されるため、個人のプライバシーの侵害にもつながる。

「夫と離れたくて離婚したのに、うまくいかないものですね」と口を開くのは大阪府在住の40代女性だ。

「私は15年前に結婚をして、渋々と夫の姓に変えました。子供を出産し、しばらくして離婚したのですが、当時子供はすでに小学校に通っていたので、姓が変わっていじめられることを心配して離婚後も元夫の姓を名乗り続けています。

 数年前に再婚したのですが、再婚相手と相談して子供には元夫の姓を名乗り続けさせています。早く元夫との過去と決別したいけれど、子供のことを考えるとそうもいかない。結婚当時に夫婦別姓が選択できたらどれだけよかったか……」

海外ではまったく通用しない旧姓使用

 選択的夫婦別姓制度導入を目指し、国を相手に提訴した第三次別姓訴訟弁護団の寺林智栄弁護士は、「女性が結婚後も仕事を続けようとするとさらに大変です」と語る。

「選択的夫婦別姓に反対する人は、『旧姓を通称として使用できる範囲を拡大することで不便は解消できている』と語りますが、それは大間違いです。

 内閣府によれば、一般的な企業において、旧姓使用を認めていない職場は半数以上。金融機関や国がかかわる公的文書は戸籍名でないといけないので、『旧姓と戸籍名が混在しているとひもづけのミスが生じかねない』という理由で、ある日突然会社が旧姓使用を禁じるケースもありました。仕事で使う場面が多いクレジットカードも旧姓では取得できませんし、給与を振り込む口座についても、旧姓使用不可の銀行は少なくありません」

 さらに困るのが海外に出かけるときだ。

「旧姓使用は国際社会ではまったく通用しません。そもそも海外では名前が2つあることが理解されず、パスポートに旧姓を併記して『こっちが戸籍上の名前で、こっちが通称です』と説明したところでわかってもらえないのです」(寺林さん)

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