議論の本質はすべての夫婦に夫婦同姓が強制されている点
30年もの間、遅々として進まない日本の議論について、亜細亜大学国際関係学部教授の秋月弘子さんが所属する国連の「女子差別撤廃委員会」は、今年10月にスイス・ジュネーブで、日本政府に対し、選択的夫婦別姓制度の導入の進捗を問う審査を行う予定だ。
「これまで女子差別撤廃委員会は『女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の氏の選択の法規定を改正すること』を2003年、2009年、2016年と3度にわたり勧告してきましたが、日本政府はまともな回答をしていません。今回の審査は、暖簾に腕押しの対応に業を煮やした同委員会の“最終勧告”といってもいいでしょう」(秋月さん)
1898年に日本で夫婦同姓かつ「妻は原則夫の姓を名乗る」ことを規定する民法が成立。これは戦後に「夫か妻のどちらかの姓を名乗る」ことに変わったが、実際は120年超、ほとんどの夫婦が「夫の姓」を選択してきた。
しかし、当時からは個人の働き方も夫婦のあり方も大きく変わっているのに、姓のあり方だけ不変のままでよいのだろうか。
「この議論の本質は、すべての夫婦に夫婦同姓が強制されている点にあります。しかも日本では約95%の夫婦が男性の名字を名乗っており、ジェンダー平等が達成されているとはいえない。
既存の枠組みを押しつけられることなく、自分に合った生き方や働き方を選べる社会を実現するには、選択肢が増えることが好ましい。
同姓を選ぶ人がいてもいいし、別姓を選ぶ人がいてもいい。誰一人取り残されることなく、本人がやりたいようにできる社会にすることが大切です。選択的夫婦別姓はそのための制度なんです」(秋月さん)
長く続いた夫婦同姓から世界標準である夫婦別姓へ。夫婦別姓は家族を引き離すのではなく、個人の生き方を尊重する、よりよい家族になるための一歩なのかもしれない。
(了。前編から読む)
※女性セブン2024年10月10日号