駄菓子屋は「2本30円」で販売する方針
佐賀県唐津市の駄菓子屋「からつ駄菓子屋さん」を運営する(有)井上商事の代表・井上誠二さんに、15円になるうまい棒をどのように売るかを聞きました。なお、同店では12円になった時は、赤字覚悟で10円で売り続けました。
「さすがに15円のものを10円で売るのは無理です。私の店では2本30円で消費税分を取らないようにする予定です」(井上さん)
30円の8%ということで2円の消費税がかかりますが、これを店側がかぶる、ということですね。同店では「10円コーナー」や「20円コーナー」などがあり、基本的には10円単位で消費税分は取らずに運営しています。「15円コーナー」は作らないようです。というのも、井上さんは、子ども達が決められた予算内に収めるよう、10円単位でコーナーを作っています。それは、子ども達がゲーム的に楽しみながらお金について学べる機会ににつながると考えているから。15円では、それが複雑になってしまうのです。現に同店には「2個30円コーナー」が存在します。
今回同店を取材したのは9月25日でしたが、30本入りの「大人買いコーナー」のうまい棒の売れ行きは好調のようでした。うまい棒が値上がりすることを知った人々が買いに来たようです。さらに、駄菓子問屋はこうした値上げのニュースがあると、安い内に商品を確保しようと動き、それで品薄になるのだといいます。
かくして注目を集める「15円うまい棒」ですが、私自身も感慨深いものがあります。現在、マクドナルドのハンバーガーの価格は170円~となっていますが、2002年の一時期は59円で売られていました。当時はデフレが加速しており、牛丼チェーンでは1杯250円なんてこともあり、「安い=エラい」という空気感があったように思います。当然今とは時代は異なりますし、インフレ率や為替の問題もありますが、10月1日からうまい棒が15円になると、4本買えば2002年のマクドナルドのハンバーガーとほぼ同じ値段ということになるのです。
こうして、うまい棒だけでなくさまざまなモノが値上がりしているわけですが、物価高騰を嘆くばかりではなく、これは来たる賃金増への布石だと前向きに捉えたいところです。我々労働者は仕事に打ち込み、「うまい棒は15円が当たり前」と感じられるようになるのが、日本経済復活への一歩となるかもしれませんね。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。