生活習慣は子供、孫の世代まで遡って見直すことが必要
高血圧の薬はその作用によって、いくつかの種類があるので患者さんの仕事や性格、年齢などによって薬を選択します。現在高血圧の内服薬は配合剤が多いので、ほとんどの場合1日1回1~2錠で血圧のコントロールができます。1年程度薬を飲んでもらい、同時に生活習慣を見直し、身体が適正な血圧の状態を覚えたら、減薬や薬をやめることが可能です。
例えば、よく処方される高血圧の薬としてカルシウム拮抗薬があります。その中には脈拍を下げる作用が強い薬や血管の攣縮(れんしゅく)(=痙攣(けいれん))を防ぐ力が強い薬、血圧を下げる効果が強い薬など、それぞれ別々の効能を持つ薬であるため、複数のカルシウム拮抗薬を組み合わせて処方します。また、β(べータ)遮断薬は、1種類で心臓を休ませ血圧を下げ不整脈を抑える力がある反面、動脈や気管支を攣縮させてしまう副作用もあります。それを防ぐ目的で別の薬を追加で処方することもあります。利尿薬も降圧剤としてよく処方されますが、その種類は様々で、血中のK(カリウム)濃度を必要以上に下げてしまう種類の薬もあるため、利尿薬だけで2種類必要なこともあります。
つまり、同じカルシウム拮抗薬といっても、薬によって細かい部分で作用の違いもあるため、それを理解した上で患者さんの状態に適した薬を選択し、服用してもらう必要があります。患者さんは処方された薬を指定通りに服用することで血圧が下がり、薬を早くやめることができるようになります。患者さんの体質などによって違いますが、早い人は1か月で高血圧の内服治療をやめることができます.中には10年経ってから中止できる方もいます。
生活習慣病は長い間の生活習慣によって引き起こされる様々な病気の総称です。その始まりは子供時代に遡ります。最近気になっているのが、学校の健診で見つかるLDLコレステロール数値が高い小学生の存在です。食生活の欧米化で脂肪分や糖分の摂取が増えているのに加え、コロナ禍以降運動習慣が減少していることも重なり、高LDLコレステロール血症になりやすくなっているのです。
子供時代に身についた生活習慣はすぐには変えられず、血管や細胞がそれに対応して変容してしまうので、将来高血圧や脂質異常症、糖尿病から動脈硬化を起こす可能性が高くなります。将来の突然死予防のために、子供、孫の世代まで一緒に生活習慣の見直しをすることが必要かもしれません。
【プロフィール】
古田豪記(ふるた・ひでとし)/1993年富山大学医学部卒業。富山大学第一外科助手を経て、2009年篠ノ井総合病院心臓血管外科部長、2012年小諸厚生総合病院内科医長に就任。2013年フルタクリニック開院。心臓外科専門医として20年間、数多くの手術を手がけ、現在はかかりつけ医として長野県佐久市を中心に地域の人々の健康長寿に尽力。とくに糖尿病、高血圧、脂質異常症の治療に力を注いでいる。
取材・文/岩城レイ子