それなのに受給額は下げられる一方だ。社会保険労務士で、“年金博士”として著名な北村庄吾氏の試算によれば、昭和16年(1941年)生まれの男性の場合、保険料の払込総額約1110万円に対し、年金支給総額(88歳まで生存)は、約3800万円で、差額は約2700万円だ。
一方、団塊世代の昭和22年(1947年)生まれの男性は、保険料総額約1330万円に対し、支給総額が約3490万円で、差額は約2160万円。昭和24年生まれは差額が約2010万円になる。上の世代と比較すると、大幅に減額されているのである。
しかも、ボリュームの大きい団塊世代を目の敵のようにして、年金官僚はいろいろな理屈を編み出して年金支給額を減らそうと画策してきた。
2004年の年金制度の改正で導入された「マクロ経済スライド」は、少子高齢化で被保険者(年金を払う人)が減り、受給者(年金をもらう人)が増えると年金財政が破綻するので、現役人口の減少や平均余命の伸びなどに合わせて年金の給付水準を自動的に調整する仕組みである。
「政府はそうは言わないが、この制度自体、団塊世代が被保険者から受給者に変わることを意識したものであることは明らかです。ただ、デフレ経済下で特例水準が解消しなかったため、マクロ経済スライドはずっと発動しなかった。
そこで、昨年の年金制度改正では、マクロ経済スライドを強化し、現役世代の平均賃金が下がると、年金生活者への支給額もマイナスにスライドさせる、いわゆる『年金減額法案』が可決された。さらにこの改正では『キャリーオーバー』制度も導入されました」(前出・北村氏)