手続きが膨大で面倒──相続にはそんなイメージが付きまとうが、最近になって簡単に済ませる新制度が次々に登場し、それらをうまく活用すれば劇的に簡潔になる。「最短相続」を実現する制度活用術を解説する。
故人の相続財産が多岐に渡ると、それだけ手続きに時間を要する。これまで出版した相続や税金に関する著書は20冊を超える相続専門の税理士で社会保険労務士の佐藤正明氏が指摘する。
「何行もの銀行口座や証券口座、不動産をたくさん所有している人ほど相続は煩雑になりがちです。高齢者の場合、ペイオフ対策で複数の銀行口座を持っているケースが少なくない。相続が発生すると金融機関ごとに解約の手続きをしなくてはなりません。
生きているうちになるべく使わない銀行口座や証券口座は解約しておくこと、また証券口座に保管した株などの有価証券は現金化しておくことが望ましいのですが、それをせずに死没してしまうケースは多い」
その結果、どこにいくらの財産が眠っているのか分からず、いくつもの金融機関に問い合わせをし続ける人が散見されるという。
「新NISAが投資ブームを後押しするなか、老後資産を株や投資信託で運用するケースが増えました。ネット証券の利用が増え、取引残高報告書や配当金の通知などが郵便物で届かず、残高どころか存在自体を把握できないという相談をよく受けます」(同前)
こうした事態に直面した際、心強い味方になるのが、証券保管振替機構(通称・ほふり)だ。
「証券口座に預けられた株式を保管し、名義書き換えや売買に伴う受け渡し、株主への通知などを担う機構です。ここに開示請求をすると、保有する上場企業の株や投資信託の口座情報を2週間ほどで知らせてくれます。その後、各証券会社に問い合わせて、実際に保有する株や投資信託を確定します」(同前)