「患者さんやご家族から『胃ろうは苦しいと聞くからとにかくやめてほしい』と言われることが多くありますが、脳梗塞の急性期やがんの治療中などは、胃ろうで効率的に直接栄養を体内に取り込んだことでリハビリに精が出て、回復した患者さんもいる。
胃ろうを拒否した場合、鼻から栄養を入れる経鼻経管栄養という方法が取られる場合があり、『胃ろうをするくらいなら』と選ぶかたもいますが、苦しみは胃ろう以上に大きい。無意識に体を動かして管を抜こうとする患者さんも多く、身体拘束されるケースもある。穏やかな最期とはほど遠いと言わざるを得ません」
終末期こそ、患者とその家族はうんと“わがまま”になるべき
終末期医療において最善の方法を選ぶことが難しいのは、薬の扱い方についても同様だと話すのは南日本ヘルスリサーチラボ代表で医師の森田洋之さんだ。
「薬ののみすぎが害になる多剤併用の問題が一般化した結果、『できるだけのみたくない』という患者が増える一方、『薬がなければ不安で、手放したくない』と話す人もいる。終末期医療において、しばしばそうした両面的な事態が生じるのは、医療に“完璧な正解”がないからです。
高齢者は体力も持病も個々人で状態が大きく異なるため、薬ひとつとってもまったく違う効き方をする。治療がどちらに転ぶかわかりません。医師として正直に言えば、やってみないとわからない部分がある。最終的には患者本人の希望が優先されるべきです。
だから終末期こそ、医師に主導権を渡さず患者本人の希望が優先されるよう、患者とその家族はうんと“わがまま”になるべきです。終末期医療の場合、一度医師や病院を決めたら“最期まで寄り添ってもらわなければならない”と思い込んでいる人も多いですが、方針に納得できなかったり相性が悪かったら変えることを検討してもいい」