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《図解で丸わかり》「定年後は保険をやめて共済でいい!」年齢、家族構成、収入別の切り替えシミュレーション “老後保障の達人”FPが指南する保険の見直し術

保険の見直しで「共済」をどう活用するか?(イメージ)

保険の見直しで「共済」をどう活用するか?(イメージ)

 人生後半戦のライフプランを考えるうえで欠かせないのが「家の次に高い買い物」と言われる保険の見直しだ。まだ子育て真っ盛りといった現役世代は民間保険による手厚い保障も必要だろう。だが、年齢を重ねるごとに、不要な特約も増えてくる。何をどう見直すか──その悩みを解消する武器となるのが、「共済」だ。専門家の試算によると、安くてシンプルな共済だけで、老後の保障は十分なケースが多いと判明した。

過剰保障になりがち

 かつて大手生命保険会社に勤務し、民間保険、共済、不動産、年金、相続とあらゆる老後マネーに精通するFP(ファイナンシャルプランナー)の横川由理氏が言う。

「生保や医療をはじめとする民間保険は基本的に現役世代が加入するものです。働き盛りの大黒柱に万一のことが起きたら……そんなリスクに備えるための商品設計なので、子供が独立し、ローン残額も少ないリタイア世代が現役時代の保険に加入し続けていると、過剰保障になっているケースが少なくありません。

 もちろん、個々の年収や家族構成によって保険の必要、不必要の判断は変わりますが、年齢を重ねるほど見直す余地が大きくなりやすい」

 保険を見直すうえでやっかいなのが、保障内容の組み合わせが複雑で“費用対効果”が分かりにくいことだ。

「手術、入院、がん罹患時とそれぞれ特約があり、何を解約して何を残せばいいのか、正直よく分かりません。いっそすべて解約したいと考えますが、無保障状態になるのも怖い」(都内在住 62歳男性)

 そこでひとつの選択肢となるのが、シンプルな保障内容と手ごろな掛け金が特徴の「共済」だ。

掛け金の3割が戻る

 一般社団法人「日本協同組合連携機構(JCA)」の2024年3月発表によると、同じ地域や職業、職場の人たちが「相互扶助」を目的に結成する協同組合は全国に4万団体超。そのなかで、約30団体が生命共済などの「共済事業」を提供している。

 これらのうち、保険事業を幅広く手掛けているのが、新聞広告やテレビCMでおなじみの「都道府県民共済」「こくみん共済coop(全労災)」「JA共済」などだ。

 公務員共済など職種限定の共済と異なり、基本的には誰でも加入することができる(都道府県民共済は各居住・勤務地に限定)。

 民間保険と大きく異なる特徴は、利益を追求せず組合員に安価でサービスを提供している点だ。

「共済には独自の『割戻金』と呼ばれる制度があり、掛け金の運用で生じた利益の一定額を加入者に還元しています。たとえば都道府県民共済のひとつ『都民共済』は2023年度の割戻率が最大約36%。年間の掛け金が3万円の場合、約1万3000円が還付されることになります」(横川氏)

 また、商品がシンプルであることも特徴だ。手術と入院に絞った保障で掛け金は月2000円、といった簡素な商品が大半で、複雑な組み合わせもない。

 こうした共済だけで「老後の保障をカバーできるケースがある」と横川氏は説明する。

同じ50代でも会社員と自営業者では事情が変わる

Aさん、Bさんの保険の見直しシミュレーション

Aさん、Bさんの保険の見直しシミュレーション

 年齢や家族構成、仕事別に民間保険を解約して共済に加入した場合をシミュレーションした。

 まず今年55歳になった会社員Aさんのケース。

 万が一のために40代前半で生命・医療保険に加入し、死亡保障2000万円にがん保障特約も付けた。だが月3万円超の保険料が大きな負担に。妻はパート勤めをするものの、家計はAさんの収入に頼っている状況だ。横川氏が指摘する。

「仮にAさんが急死しても、700万円の預貯金と遺族年金等で、当面の生活費や子供の学費はまかなえるでしょう。現在の保障内容は手厚すぎると言えます。病気死亡時800万円、入院時1万円(日額)などの保障がある『都道府県民共済総合保障4型』への切り替えが選択肢になると思います」

 その場合の掛け金は月約2560円(割戻後)。保障内容は薄くなるものの、現在の保険に比べ年間最大約34万円の出費減となる。

 同じく50代会社員Bさん(53)は、20代で10年更新型の定期保険に加入。50歳になり月の保険料が1万8000円から3万円超になることを知り、愕然とした。

「定期更新型の保険商品によくあるケース。高齢になるほど急激に保険料が上がり、家計を圧迫することがあります。ただ、Bさんは独身なので大きな死亡保障は必要ないでしょう。御親族に葬儀代などを遺したいと考えるなら、死亡保障が400万円ある全労災の『こくみん共済』の保障で十分だと思います」(横川氏)

 同じ50代でも、会社員と自営業者では少し事情が変わる。

Cさん、Dさんの保険の見直しシミュレーション

Cさん、Dさんの保険の見直しシミュレーション

 飲食店を経営するCさん(58)は 、病気やケガの際も傷病手当金が給付されず、遺族年金など死亡後の社会保障が会社員に比べ手薄なことに悩んでいた。そこで、30代後半から死亡保障1500万円と各種特約を含む月2万円の生命保険に入ったが、飲食需要減でその捻出も厳しくなった。

 支払い・保障ともに60歳までの定期保険なので、この機会に解約し、割安な別の保険に入ることも考えているという。横川氏が助言する。

「奥様が会社員、お子さんも間もなく独立されるので、割高な保険に入り続ける必要はないでしょう。ただ自営業なので、病気やケガによる休業等を考慮することは必要。都道府県民共済の『総合保障2型』(月2000円)をベースに考えたい。月1000円の特約追加で、入院時2万円の一時金、諸条件はありますが退院後も4万円の『在宅療養共済金』が受け取れるので、検討の価値はある」

年金生活が視野に入る60代の場合

 働き盛りの50代と年金生活が視野に入る60代では考え方も変わってくる。

 60歳で定年退職、再雇用で働くDさん(61)は、定年を機に新たに終身払いの生保(死亡保障200万円)とがん保険(診断給付金100万円、入院保障1万円/日など)に加入した。保険料は月1万7000円。

「日本人男性の平均寿命81歳まで存命なら、この先20年間の保険料は総額約400万円。がんなどで入院・手術しても、高額療養費制度をはじめとする公的補助により自己負担額は一般的に月10万円以内に抑えられます。がん保険は、診断時の給付金などまとまったお金を受け取れるメリットがありますが、罹患しなければ掛け金は1円も戻ってきません」(同前)

 この場合は、都道府県民共済の「入院保障2型+新がん1型特約」(月3000円=割戻後約1920円)が選択肢に入る。

Eさん、Fさんの保険の見直しシミュレーション

Eさん、Fさんの保険の見直しシミュレーション

 定年後にアルバイトで暮らす65歳のEさん、年金収入のみのFさんの事例もシミュレーションしたところ、いずれも月3000~3200円の都道府県民共済でカバーできる試算になった。

「都道府県民共済の『熟年型』は65歳からでも新規加入が可能で、月額2000円で70歳までの病気死亡時100万円、入院時2500円/日の保障があります」(同前)

共済への切り替えの注意点

 ここまで6つのケースで共済への切り替えを試算したが、注意点もあると横川氏は続ける。

「あくまで『安くて最小限の保障』で十分なケースであり、万人に共済が向いているわけではありません。手厚い保障が必要な人は、やはり民間保険を検討すべきでしょう」

 実際、共済の掛け金の安さを重視するあまり、本来必要な保障が手薄になるケースも少なくない。

 今年3月に亡くなった会社員男性(享年47)は、「高校、大学進学を控える2人の子のため少しでも節約を」と、死亡保障1500万円の生保(月5000円)から都道府県民共済の総合保障2型(月2000円)に乗り換えた。

 その矢先、脳卒中で倒れ帰らぬ人に。死亡保障は400万円しか下りず、遺族年金と貯蓄もわずかで、残された妻は不安な日々を過ごしている。

 一方、自営業男性(65)は今夏、がんの手術を受け、3週間の入院を強いられた。若い時から加入している総合保障型共済で「入院費はほぼカバーできる」と踏んでいたが、65歳以降は入院保障が日額5000円から2500円になると知り悲嘆に暮れた。横川氏が語る。

「お金がかかる子供がいる人は、死亡時の保障だけは充実させるべきです。この会社員男性の場合、保険を解約せず継続するか、共済なら死亡保障が倍の『総合保障4型』(月4000円)など、より手厚いタイプに加入する選択肢もあったはず。

 また共済は高齢になると保障内容が変化するため、保障だけでは費用が賄いきれないケースが生じることにも留意すべきでしょう」

 現在の保障が本当に必要か、無駄な掛け金を払い続けていないかを精査することから始めたい。

【番外編】自動車保険でも選択肢に

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※週刊ポスト2024年11月1日号

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