ベストセラーとなったトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』で明らかにされたのは、資産が生み出す利回りは常に労働所得の伸びを上回るという事実。つまり「資産を持つお金持ちは、ますますお金持ちになる」ということだ。
とはいえすべてのお金持ちが最初から資産家だったわけではない。先祖代々のお金持ち一族がいる一方で、最近では一代で資産を築き上げる「新富裕層」も続々と登場している。彼らはいかにしてお金持ちの仲間入りをしたのか?
これまで多くの資産家たちの家計相談を受けてきた「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が、お金持ちの最新財テク事情から節税術まで、知られざるその実態を大解剖する。
新富裕層の勝ちパターン「グロース型」か「バリュー型」か
お金持ちがますます富み、そうでない者がさらに貧しくなる─そんな二極化への不平・不満を背景にトランプ大統領が誕生した米国同様、日本でも格差が拡大しています。
中流層がどんどん減少して、着実に下流層が増えている。それは具体的なデータを示すまでもなく、みなさんも実感するところでしょう。
中流から下流への転落が進む一方で、富裕層のなかにも変化が生じています。
代々の土地持ちという旧来の資産家に加え、自ら1億円を超えるような資産を築いた「新富裕層」が続々登場し、それは“新旧交代”といってもいいくらいの勢いで増えています。
この新富裕層には2つのタイプが多く見られます。(1)投資で成功した人たち、(2)事業で成功した人たちです。彼らの多くは、2001年以降に台頭した「新しい波」に乗ることで大きな財産を築いてきました。
たとえば円安トレンド時のFX(外国為替証拠金取引)や、ミニバブル直前の不動産投資、あるいはITをはじめとする新規事業などです。
その勝ちパターンにも特徴があります。まずは事業や投資において今後の大きな成長に期待して資金を投じる「成長志向」、いわば「グロース型」が挙げられます。一方、現在価値が本来あるべき適正価値から大きくかけ離れている「マーケットの歪み」を狙う「割安志向」、いわば「バリュー型」もあります。
前者は株式投資や事業で多く用いられ、後者は不動産投資でよく見られます。不動産価格は相場があるとはいえ、相対取引であるため、時には信じられないほど割安な物件が眠っていたり、値下げ交渉の余地もある。そのような「マーケットの歪み」を見つけ出し、安値で仕込むやり方です。もちろん、それらの方法で実際に大金を手にするのは一筋縄ではいきません。