「第2、第3のNスペを」
視聴者の中には鋭い認識の方も少なくない。他者の問題には突っ込みながら、自らの課題に手ぬるい姿勢はどう映っただろうか。「もっと踏み込めたはず」等の批判は、“言うことやることの乖離”ゆえに大きくなっていないだろうか。
役員・管理職の視聴率が特段高かったとも紹介した。企業コンプライアンスのあり方に強い関心を持つ人々が多かったはずだ。そんな人々に“自らの課題に手ぬるい姿勢”を見せてしまっては、NHKの時代認識がどの程度のものかを露呈したことにならならいだろうか。
OBの感想にも「よく頑張った」等の意見があった。これこそNHKという組織が時代遅れになっていることを示していないだろうか。ITデジタルが主で、放送は一部に過ぎない存在となっている。そんな時代に番組は何を訴え、どう人々に伝えられるべきか。
「第2、第3のNスペで徹底的に向き合って掘り下げることを希望」とするSNSの声の通り、ここをよく考えたうえで、今回のNスぺも次を考えるべきだろう。
【プロフィール】
鈴木祐司(すずき・ゆうじ)/次世代メディア研究所代表。1958年、愛知県生まれ。1982年、東京大学文学部卒業後にNHK入局。番組制作現場にてドキュメンタリーの制作に従事した後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。デジタル化が進むなかで、メディアがどう変貌するかを取材・分析している。著書に『放送十五講』(2011年、共著)、『メディアの将来を探る』(2014年、共著)。